脳の使い方を変えるWeメソッド®WSC ホールシステムコーチング®Whole System Coaching

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個人に使うチームコーチング/脳の英雄の旅

2022.09.01

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チームコーチングと聞くと何をイメージしますか?
スポーツのチームや組織のチームへのコーチングをパッと思い浮かんだ人もいるでしょうか?
多人数に向けてコーチングすることをイメージした方もいることでしょう。
今回は、個人へのチームコーチングを全脳/脳全体という切り口でご紹介します。

1.他者とチームになる前に、自分とチームになろう

チームを考えるとき、チームスポーツをする、チームで仕事をする、チームでプロジェクトをするなど、「メンバー(他者)とどのようにやるのか?」
と自分を取り巻く環境、やりとり、関係性、協働、共創など、外に目が向きがちではないでしょうか?

最適なチーム活動を実現していくためには、自分を取り巻くその中心である
自分自身を1つのチームにする必要があります。
他者とチームになる前に、チーム(私たち)の最小単位である「私」がワンチーム/One teamになること。

ビジネスの場面で1つのチームになっていくチームコーチングの過程で、私たちのチームが1つになることと、私自身が1つのチームになることは並行して行われるかもしれません。
では、「私たち」のなかの「私/自分」をチームにするにはどんなアプローチがあるのでしょうか?

2.脳を1つのチーム/One teamとしてアプローチする

「90秒ルール」というものをご存知でしょうか?
「5秒ルール」(食べ物を床に落としても5秒以内なら細菌が着かないという世界的に信じられている科学的根拠がないルール・考え方)なら聞いたことがある人、知っている人も多いでしょう。
5秒ルールのすごいところは、科学的根拠がないにも関わらず、ある程度一般化しているところです。前置きはさておき、「90秒ルール」は「5秒ルール」ほど知られていません。怒りを抑えるための6秒ルール(アンガーマネジメント)もありますが、実際には90秒は必要です。

ジル・ボルト・テイラー博士の「私たちには感情回線を自ら選んでオン・オフにする力がある」という研究によると、一旦感情回路が刺激されて感情的な反応を引き起こすと、その感情の元になる化学物質が体内に満ちた後、血液から完全に洗い流されるまでは90秒足らず。という結果が出ています。

実際、私たちは、感情回路の発動を引き起こした考えを何度も思い出して、90秒より長く傷ついたり、怒ったり、悲しんだりすることができます。
つまり、この場合、私たちは神経科学的レベルで、感情回路を刺激して何度も繰り返し作動しているからです。
何度も引き金を引かなければ、化学物質が中和されるのにかかる90秒後に、感情回路は自然に停止します。

脳科学者 ジル・ボルト・テイラー博士を一躍有名にしたTEDトーク:パワフルな発作の洞察(2800万回以上再生)で、一人一人の脳の中の「私たち」について、話しています。
脳の左半球と右半球という「私たち」についてです。

瞑想やマインドフルネスは、「今ココ」に気づき、脳のおしゃべり(評価、批判など)を静めてくれることはできます。
さらに、「私の中の私たちの力」を理解し、実践すれば、脳の中の自分が動かしたい神経回路を意図的に選べるようになります。私たちは最終的に、周囲の環境に左右されることなく、一瞬ごとに、自分が誰で、どうありたいかを選ぶ力を手に入れるのです。
それは、心理学のレベルでも生物学のレベルでも、どのような選択肢があるのかがわかるようになるからです。

3.脳の英雄の旅(ヒーローズジャーニー)

神話学者ジョゼフ・キャンベルの有名な神話の原型である英雄の旅(ヒーローズジャーニー)があります。原型とは、神話に共通する基本的な構造、型です。
日本の代表的なヒーローズジャーニー(原型)は、「桃太郎」でしょうか。

ヒーローズジャーニーを脳への旅に置き換えた点(符号した提唱)が新鮮です。
著書の中で、彼女は、脳の世界に置き換えると、英雄は自我(エゴ)にもとづいた左脳の意識から飛び出して、右脳の無意識への領域に足を踏み入れなければなりません。

大脳新皮質(思考中枢)、大脳辺縁系(情動中枢)を左右にそれぞれ分けて、4つの領域のことを脳の中の「4つのキャラクター」と呼んでいます。加えて、注目すべき点は、4つのキャラがカール・ユングの無意識の主な4つの原型と明らかに符号しています。
(ユングが提唱する4つの原型: ペルソナ、シャドウ、アニムス/アニマ*、真のセルフ*アニマスは
男性の中の女性的要素、アニムスは女性の中の男性的要素)

脳の中の4つのキャラクターを知り、「脳回路への英雄の旅」に乗り出そうと言っています。
詳しくは、著書(参考文献)を参照してください。

ホールシステムコーチング®︎では、脳の4象限を「全脳システム (L1,L2,R1,R2)」と呼び、全脳/脳全体がチームとして機能するようにコーチングアプローチをしています。

今、自分は脳のチームのどのキャラクター(領域)が精力的に動いているのか?
チームとして見たとき、どんな状態でしょか?

生物学的な視点から見ると、人間は、感じることもできる「考える生き物」というよりも、
考えることもできる「感じる生き物」なのです。

まとめ

私たちの脳は多様性をもったチームです。
英雄の旅は、左脳の理性的な自我(エゴ)に基づく意識から踏み出し(または今までの自我を一旦捨てて)、右脳の無意識の領域(R1,R2)への冒険の旅に出ていくことです。

コーチングをしている時、旅の行き先(目標/ビジョン)が理性的で現実的であるときは、その人は左脳の理性的なところに留まって話をしています。
だからこそ、理性的で評価的な脳の領域から出て、右脳の領域でイメージ、感覚を話す探求の旅(英雄の旅)を始めることはとても効果的でしょう。

新しいことを始める時や新しい情報が入ってきた時、大脳辺縁系の扁桃体は「安全なのか?」と反応または対応します。左脳の扁桃体は、新しいことに不安や恐怖を感じると、防衛反応が働き、頭ではやろうと理解しているが、行動や気持ちが伴わないという自分の中で対立が起こります。
ですから、自分の脳チームに、新しいことにチャレンジすることが安全だと感じてもらうためには、行き先(目標/ビジョン)のイメージをワクワクするものに描くことが重要なのです。
どのように「感じているか」が大きく影響します。
私たちは考えることもできる「感じる生き物」、1つのチームなのですから。

記事の著者

生嶋 幸子Sachiko Ikushima

  • ホールシステムコーチング®共同開発者
  • 国際コーチング連盟マスター認定コーチ(MCC)(関西女性初)
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

株式会社コーチ・アイエヌジー 代表取締役
自社開発したホールシステムコーチング®が2014年国際コーチング連盟(ICF:本部アメリカ)からコーチ・トレーニング・プログラム(ACTP)として日本で3社目に正式に認定される。2000年よりコーチとして活動。エグゼクティブコーチング、企業向けプロジェクトコーチング、コーチ養成スクールなどを中心に人と組織の変革を行う。
2017年国際コーチング連盟グローバル・カンファレンス(ワシントンD.C)でアジア人唯一のスピーカーを務める。