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「学習の5段階」を理解し成長を促す

2025.06.01

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学習を新しく始めると、自分が成長しているかどうか、不安になることがあります。そのような時、「学習の5段階」の成長プロセスを知っていれば、「今はそのような段階だ」と落ち着いて状況を受け止められ、次の段階に進む方法を効果的に考え、実行に移すことが可能になります。

さらに「学習の5段階」を知ることで、メンバーの学習レベルも今どの段階なのかが見えてきて、どのようにすればメンバーのさらに成果につながるか、そのアプローチ法が見えてくるでしょう。

1.「学習の5段階モデル」とは

「学習の5段階モデル」とは、1970年代にノエル・バーチ(Noel Burch)によって提唱された、スキルや知識の習得プロセスを段階的に示した「学習の4段階」をベースとし、「どうして自分がそれをできているのか」を言語化・意識化し、相手へ伝える(教える)能力を加え「学習の5段階モデル」が登場しました。

「学習の5段階モデル」を知ることで、学ぶ立場、教える立場での成長プロセスを理解でき、私たち(自分やメンバー)の成長スピードを向上するのに役立つでしょう。

2.「学習の5段階」5つの階層と具体例

「学習の5段階」とは以下の5つの階層のことを言います。そして各階層の具体例として、コーチングスキル「聴く(傾聴)」について見ていきましょう。

①無意識の無能力(知らないし、できない。そして、それに気づいていない。)
自分に何がどの程度不足しているのか気づいていない状態です。つまり「知らない」ということを「知らない」状態です。
例)「傾聴」について知識がなく、自身の経験から「聴く」とはメンバーの話を親身に聞いて、経験やアドバイスを教えるのが良い聴き方と考えている。

②有意識の無能力
知っているができない状態
例)コーチングの傾聴というスキルは本で読んで知っているが、いざやってみたら、話を遮ってしまったり、アドバイスに戻ってしまったりして「できてない」ことに気づく。

③有意識の有能力
意識すればできるようになる状態。
例)傾聴のスキル(あいづち、リフレインなど)を頭に浮かべ、意識しながら丁寧に話を聴いている。

④無意識の有能力
考えなくても自然にできるようになった状態
例)傾聴のスキル(あいづち、リフレインなど)は無意識で出来ている。クライアントに集中し、言葉以外の情報(表情・声のトーン・エネルギー・沈黙・間など)も自然とコーチは聴いている。

⑤無意識の有能力に対して意識的である
自分が無意識レベルで出来ることを言語化し、相手に教えられる状態。
例)傾聴のスキルとはなにか、知識と経験を踏まえて相手にわかりやすく教えることが出来る状態。

3.人材育成に活かす「学習の5段階」のポイント

人材育成では「学習の段階」を意識してアプローチすることで、相手の理解度や学ぶスピードが加速します。
知っているだけなのか、やったことがあるのか、本当に使いこなしているのか、など相手の「学習の段階」を見極める事が相手の理解度や学習のスピードを加速するためには重要です。

「学習の段階」に応じたアプローチ例

学習の段階 アプローチ例
1.無意識の無能力 定義・ポイント・構造をシンプルに伝える(教える)
2.有意識の無能力 どうしてそれが重要か、図解・比喩・例で補足し最初の一歩につなげる
3.有意識の有能力 ワーク・演習・ロールプレイを取り入れ何度もチャレンジできる環境を整える
4.無意識の有能力 ケーススタディや“応用練習”で学びを深める
5.無意識の有能力に
対して意識的である
発表・フィードバック・「教える」機会を考える

「学習の段階」にあったアプローチをすることで、相手の理解度や学ぶスピードが上がります。

アメリカ国立訓練研究所では、学習内容の定着率に関するモデルとして、下の表(ラーニングピラミッド)のように学習方法ごとにどれだけ記憶に残るか(定着率)を明記しています。

ラーニングピラミッドの構造

学習方法 定着率
講義を聞く(Lecture) 5%
読書する(Reading) 10%
視聴する(Audiovisual) 20%
デモを見る(Demonstration) 30%
グループで議論する(Discussion) 50%
自分でやってみる(Practice) 75%
他人に教える(Teaching others) 90%

アメリカ国立訓練研究所(National Training Laboratories)が提唱

ラーニングピラミッドでは、講義・読書・視聴など一方通行のインプット中心の学習は知識の定着率が低くなりがちな傾向があります。そして、議論・実践・教えるなど能動的学習は学習の定着率が高くなる傾向があります。

「学習の5段階」では3.有意識の有能力、4.無意識の有能力、5.無意識の有能力に対して意識的である、がラーニングピラミッドの50%以上にあたります。3.有意識の有能力以上のアプローチをおこなうことで、学習の定着率も高くなるでしょう。

まとめ

私はコーチングを学び初めの頃に「学習の5段階」を知りました。コーチングセッションがうまくいかない時、「今は学習の3段階目なので、焦らず着実に練習を積み上げよう」と「学習の5段階」を思い出しながら、自分を励ましていました。「学習の5段階」を知っていたからこそ挫折せずコーチングを今まで続けてこられたと感じます。

今はそういう段階なのだと、自分の立ち位置を知ることは成長する過程で安心感につながりました。

そして、「学習の5段階」を知ることで、成長するとは学ぶだけでなく、実践しわかりやすく教えるレベルになることが
さらに先にある成長なのだと感じています。この考え方と実践は、心強い育成の伴奏者となることでしょう。

記事の著者

山本 貴史Takashi Yamamoto

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ