正しさでは人は動かなかった ― デール・カーネギー『人を動かす』とコーチングが教えてくれた“在り方”
2026.03.01

私は20代の頃、正しさ(正論)で人を動かそうとしていました。
間違っていることは正せばいい。そう信じていました。
しかし、その結果、スタッフの離職と関係性の悪化を招きました。
「どうして、正しいことを言っているのにうまくいかないのか?」
「人間関係を円滑にするには何が必要なのか?」「仕事で成果を上げるにはどうしたら良いか?」と考えていた時に出会ったのがデール・カーネギー著『人を動かす』です。
1936年(初版)に出版されたデール・カーネギー著『人を動かす』(英題: How to Win Friends and Influence People)は、90年近く経った今でもビジネス書・自己啓発書として広く読まれています。
当時はその言葉がとても新鮮で、同時に腑に落ちるものばかりだったことを覚えています。
現在は当時と時代背景も表現の仕方も違いますが、根底に流れている思想の多くにコーチングとの共通点を感じています。私のコーチングの原点は、この一冊にあると今も感じています。
今回は、私がマネジメントの現場で活かしているコーチングと、デール・カーネギーの著書『人を動かす』の思想について考えていきます。
1.デール・カーネギー『人を動かす』の本質
デール・カーネギー『人を動かす』の本質は、「何をするか(Doing)」より、「どのような姿勢で相手と向き合うか(Being)」を問うものと考えます。
良好な人間関係を構築するため、どのような姿勢で相手と向きあうのか?デール・カーネギーは著書『人を動かす』の中で、4つのカテゴリーと30の原則を紹介しています。
主な原則は以下の通りです。
① 人を動かす3原則(まず、人間関係の基礎となる3つの原則)
1. 批判も非難もしない。苦情も言わない。
2. 率直で、誠実な評価を与える。
3. 強い欲求を起こさせる。
② 人に好かれる6原則(人に好かれ、信頼関係を築くための6つの原則)
1. 誠実な関心を寄せる。
2. 笑顔で接する。
3. 名前を覚える。
4. 聞き手にまわる。
5. 相手の関心事について話す。
6. 心からほめる。
③ 人を説得する12原則 (相手の意見を変え、自分の思い通りに動いてもらうための12の原則)
1. 議論を避ける。
2. 誤りを指摘しない。
3. 誤りを即座に認める。
4. 穏やかに話す。
5. 相手に「イエス」と答えさせる。
6. 相手にしゃべらせる。
7. 相手に思いつかせる。
8. 相手の立場を理解する。
9. 相手の意見や欲求に同情する。
10. 美しい心情に呼びかける。
11. 演出を考える。
12. 対抗意識を刺激する。
④ 人を変える9原則 (相手の気分を害さずに、行動を変えてもらうための9つの原則)
1. まずほめる。
2. 遠回しに注意を与える。
3. 自分の誤りを話す。
4. 命令をしない。
5. 顔を立てる。
6. わずかなことでもほめる。
7. 期待をかける。
8. 激励して能力を伸ばす。
9. 喜んで協力させる。
今読み直すと、誘導的であり、上下関係(与える側、与えられる側)も感じますが、30年前に初めて読んだ時は、私のあり方次第で相手が変わるのかと衝撃を受けました。
そして、批判、非難、不平を言わない、率直で、誠実な評価を与える(伝える)、笑顔で接する、名前を覚える、聞き手にまわるなど、すぐに実践しようと決め、今でもマネジメントの現場で意識して実践しています。
デール・カーネギーは本書の中で、「変えられるのは、まず自分自身の態度である。」と述べています。
この言葉は、私にとって、コーチングのあり方そのものと感じています。
2.マネジメントの現場で実践している3つのこと
私はマネジメントのなかで、デール・カーネギー『人を動かす』から学んだ以下3つのことを意識して実践しています。
① 「関係性」をつくる
人間の最も深い欲求は「重要な存在として認められたい」という欲求であると本書では紹介され、「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」を通して相手との信頼関係を築くのが大切だと伝えています。
私は、批判・非難・不平を言わない、率直で誠実な評価を与える(伝える)、笑顔で接する、名前を覚える、聞き手にまわる、を意識しスタッフや取引先との良い関係性づくりを心がけ、私たちが協力し合える関係性づくりを意識しています。シンプルですが、この積み重ねが信頼関係をつくります。
② 相手の中にある「動機」に火をつける
相手の「動機」に火をつける(やる気を起こさせる)ための最も重要な原則は、「相手の心の中に強い欲求を起こさせる」 マネジメントの現場で意識しているのは、スタッフの大事にしている事や興味・欲求など明確にするための質問と、全力でスタッフの話に耳を傾けること。人は対話を通して気づきが湧き上がり、
承認されることで動き始めると、私は信じています。セールスの場面でも、商品を手に入れる意味や目的、手に入れた時のイメージを質問してお客さんと対話していくことで、お客さんの「欲しい」という欲求も上がり購買意欲UPにつながっています。
③ 相手の可能性を信じるという姿勢
スタッフとの面談では、「相手の可能性を信じる」という姿勢、心がけで臨みます。
本書では「相手の中にある『高潔な動機(良き意図)』を認め、信頼し、その良さを引き出すことこそが、相手を前向きな変化へと導く魔法である」と紹介しています。
スタッフ一人一人が、この会社にどのような貢献ができるかを聴く、スタッフの話を信じる、そして感謝の気持ちを伝える。感謝の気持ちは「思う」ではなく「伝える」必要があります。感謝の気持ちを伝えることは、「あなたの行動には価値がある」「あなたは組織に必要な存在だ」というメッセージを伝えるのと同じだと学びました。
人は、自分の存在が認められたとき、その期待に応えようと動き始める。(デール・カーネーギー)
3.コーチングとの共通点
『人を動かす』には、「人は本来、自ら成長しようとする存在である」という人間観を感じます。
相手を理解し、尊重し、その可能性を信じる。その姿勢は、私の知るコーチングにも通じています。
人を変えようとするのではなく、まず自分のあり方を整える。
相手を評価する前に、理解しようとする。
不足ではなく、可能性に目を向ける。
言葉や手法は違っても、根底にあるのは「人の可能性を信じる」という姿勢ではないでしょうか。
この意識の積み重ねこそが、やがて組織のパフォーマンスを高めていく。私はマネジメントの現場で、そう実感しています。
かつて正しさで人を動かそうとしていた私が、今は「信じる」という姿勢を何よりも大切にしている。
その変化こそが、組織の変化の始まりでした。
まとめ
『人を動かす』という言葉は、現代の感覚で読むと、どこか誘導的で、上下関係を前提としているように感じますが、本質は、人を操作することではなく、相手を尊重し、理解し、その人の中にある善意や可能性に光をあてる姿勢にあります。約90年近く前に書かれたとは思えないほど、その思想は現代のコーチングにも通じています。
人を変えようとするのではなく、人の可能性を信じる。
その在り方こそが、時代を超えて受け継がれている本質なのだと、今回のコラムを通して改めて感じています。
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