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ニュータイプの思考と行動様式が活かせる組織。みんなのオムニケーション!

2021.06.01

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私たちはコロナを経て、予測不可能な事態を目の当たりにし、この現代世界がVUCA ( V = Volatile(不安定)、U = Uncertain (不確実)、C = Complex(複雑)、A = Ambiguous(暖味)であることを体感して、これまでとは異なる思考、行動様式に大きく変えることを余儀なくされています。
そんな中で、今あらためて『新時代を生き抜く24の思考・行動様式 ニュータイプの時代』が読み返され注目されています。

これはコロナ前の2019年にコンサルティング業界で活躍し、『なぜエリートは「美意識」を鍛えるのか?』の著者である山口 周氏が出版した書籍で、タイトルの通りVUCAの時代を生き抜くために私たちに必要とされる思考と行動様式についてわかりやすくまとめられています。
私たちがコーチングで大事にしている視点が重なったこともあり、現在、私の職場で起きている変化についてこの書籍にある項目に沿って考察をしてみることにしました。

1.ニュータイプのその思考と行動様式とは?

山口氏は、これまで組織において有能とされてきた思考と行動様式を「オールドタイプ」とし、これからの時代に必要な思考と行動様式を「ニュータイプ」と呼んでいます。そして、思考・行動様式で代表的なところを下図のように対比し、これからの時代は真逆と捉えられるニュータイプに挙げられたアプローチをする人材、アップデートができる人材が求められると言っています。

これから求められる思考と行動様式とは?

正解を探す 問題を探す
予測する 構想する
KPIで管理する 意味を与える
生産性を上げる 遊びを盛り込む
ルールに従う 自らの道徳観に従う
一つの組織に留まる 組織間を越境する
綿密に計画し実行する とりあえず試す
奪い、独占する 与え、共有する
経験に頼る 学習能力に頼る

その背景要因には「メガトレンド」として下記の6つを挙げています。
①飽和するモノと枯渇する意味
②問題の希少化と正解のコモディティ化
③クソ仕事(意味のない仕事)の蔓延
④社会のVUCA化
⑤スケールメリットの消失
⑥寿命の伸長と事業の短命化

変化を促す背景要因と合わせて図にしたものを見つけたので、以下に転載します。




参照HP: https://www.biz-knowledge.com/entry/newtype

ここでは、変革が求められる背景①、④を抜粋し、そのポイントをまとめます。

①飽和するモノと枯渇する意味
今の時代、たいていのモノを手に入れられる一方で、多くの人は欠落感を抱えています。何かが満たされていない、かつての時代にあった物質的な欠乏という課題がほぼ解消された世界で、人はいかにして「生きる意味」を見いだせばいいのか。
この問題は、ドイツの哲学者ニーチェにより、現代人がやがて「意味の喪失」という問題に陥り、ニヒリズム(虚無主義)に捉えられると予言されていて、
私たちは「モノが過剰で、意味が希少な時代」にあっても、変わらずに「役に立つモノ」を生産し続けようとするオールドタイプでは価値を失ってしまいます。
希少な「意味」を世界に対して与えるニュータイプは、大きな価値を生み出していくことになります。

④社会の「VUCA」化
社会における「VUCA化の進行」は、私たちがこれまで「良い」と考えてきた様々な能力やモノゴトの価値に大きな影響を与えています。
例えば、「経験の無価値化」が挙げられます。これまで私たちは「経験豊富」という要件を無条件にポジティブに評価してきましたが、環境がどんどん変化していくと、過去の経験に頼ろうとする人は人材価値を減損させる一方、新しい環境から柔軟に学び続ける人は価値を生み出します。

また、「予測の無価値化」もあります。これまで何かを行う時、中長期的な予測をもとに計画を立てることが良いとされてきましたが、社会が不安定、不確実になると、「予測の価値」も下がり、計画を実直に実行するという行動様式はかえってリスクが大きくなってしまいます。
今後は、とりあえず試し、結果を見ながら微修正を繰り返す、「計画的な行き当たりばったり」によって、変化する環境に対して柔軟に適応していくことが求められるため、経験をリセットして学び続ける柔軟性が重要となります。

2.ニュータイプの組織マネジメント。
求められるリーダーシップ

さて、前項では、この時代に求められるニュータイプの思考・行動様式についてご紹介しましたが、このような人材が集まった企業組織は成立するのか、どのようにマネージするのか、そもそも管理すること自体有効なのか疑問の湧くところでもあり、興味深い点でもあります。
ここではニュータイプの組織マネジメントとそこに求められるリーダーシップについて書きます。

前項で伝えた通り、VUCAの世界では、経験がものを言わなくなり、予測に基づいた長期計画を遂行するために有効な権威や権力による、働く側が疑問を持たず、生産性を重視したある種、自動操縦的な統率は終わりを迎えつつあります。そんな状況下で重要となるのは権威ではなく、「問題意識」で行動することと述べています。経験の量や権威で意思決定をするリスクを回避するためには、ニュータイプのマネジメントは肩書きや権威ではなく、フラットに振る舞い、問題意識を共有します。これについては、映画を例にあげて説明しているのがわかりやすかったので、ここで紹介します。

アメリカのパニック映画の代表作「ジョーズ」では、権威が役に立たず最後にジョーズを退治したのは地元の田舎刑事、また「ダイ・ハード」でもFBIのテロ特殊部隊は無能で田舎刑事が解決しています。日本の問題解決映画「ゴジラ」や「水戸黄門」では権威や権力で解決されます。
どちらもワン・パターンではありますが、今の時代、強いリーダーやヒーローを待っていては、問題が深刻化し、企業組織は崩壊してしまいます。
日本人は「権威」と「リーダーシップ」を一体化して認識してしまう奇妙な性癖があるが、そもそもリーダーは権威から生まれてはいないと述べられています。

アメリカの人種差別撤廃運動も、ある町の黒人女性が白人専用の座席の空席から動かなかったことから始まりました。
それは問題意識を持った小さな行動から始まっています。
ニュータイプは、上下関係で意思決定をするのではなく、上司も部下も問題意識をもって自分の道徳観に従い考えを伝え合う関係をつくります。
また、著書では、人と人、人と組織をつなぐ重要なポイントとして、これからの学習スタイルの項で「深い対話」があげられています。
「要するに」、「要は…ってこと」と相手の言葉を先んじてまとめる、これまでの生産性重視による聞き方を「浅い対話」、オールドタイプのものだと指摘しています。

「深い対話」とは、次にあげるオットー・シャーマーが『U理論』で提唱したレベルまで聴くことです。
第1レベル…自分の枠内の視点で考える=新しい情報を自分の過去の思い込みの中に流し込む。
第2レベル…視点が自分と周辺の境界にある=事実を客観的に認識できる。未来が過去の延長線上にある場合は有効
第3レベル…自分の外に視点がある=顧客の感情を、顧客が日常使っていることばで表現できるほど一体化する。相手とビジネス取引以上の関係を築く。
第4レベル…自由な視点=何か大きなものとつながった感覚を得る。生きてきた体験、知識が全部つながる知覚をする。

「深い対話」により気づきを得る、広く深く他者から学ぶ、学習スタイルが重要と説いています。

3.ニュータイプ思考と行動様式を引き出す場づくりの試み

さて、ここでは私の職場のチームで「とりあえずやってみていること」からの気づきと学びを共有します。
私は社内でコーチングやコミュニケーションのトレーニングもかたわらで行っています。しかしながら、これまでの対象は所属するチームの外、別の部署から依頼を受け実施していました。今回、はじめて所属チームの「コミュニケーション・トレーニングを実施するプロジェクト」のメンバーに名乗りをあげて引き受けてみました。

私の会社は米企業で毎年「同僚・職場経験(コリーグ・エクスペリエンス)」という調査が世界の全社で行われます。その質問項目は米国本社で毎年アップデートして作成されているものの、米国企業とはいえ日本支社の90%は日本人でアメリカとの文化差から戸惑ったり意図がくみ取れなかったりする質問もあります。前年のこの調査でポイントが低かったところをフォーカス・エリア(重点項目)として毎年トレーニングや改善のための活動を行っています。

そして、今年のフォーカス・エリアは「在宅勤務によるコミュニケーションの希薄さ」と「全方位フィードバックの活用」の2項目になりました。
昨年末に問題点をチームディスカッションで洗い出したところ、フィードバックそもそもについて「指摘」、「批判」、「上司に対して言うのが難しい」、「上司から求められたことがない」、「訊いているつもりだけど返ってこない」など、認識にズレがあることに気づいたのが、名乗りを上げたきっかけの一つです。
今年の活動テーマは「みんなのオムニケーション!」。「全集中で全員集合!」、「オモニじゃないよ!オムニだよ!」など遊びながら名前を出し、最後はオンライン投票でこれに決定しました。「オムニケーション」は「オムニ(全て)」と「コミュニケーション」をくっつけた造語です。

そして、チームディレクターに今年の計画をシェアしたところで今回こんな提案を受けました。「自分はそもそも人事で行っているマネジメント研修の、上から下目線の内容が好きではない。もっとフラットになる勉強会とかトレーニングができないか。」とのこと。ここからシフトチェンジが起こり、コミュニケーションをフラットにしていく取り組みが始まりました。

アクティビティとトレーニングは3月から2週間毎ではじめたところですが、オンライン会議ツールがバージョンアップしていたり慣れない社内SNSの機能を使ってみたり、試行錯誤の繰り返しで毎回実験ワークショップになっています。参加メンバーからもフィードバックや提案をもらっては修正し、プロジェクト・メンバーだけでなく、チームメンバー全員によりワークショップ自体がバージョンアップしていっています。
難聴者のチームメンバーのために翻訳機能を使って音声字幕を試すことも開始しました。参加できないメンバーのためにレコーディングを残し、うまく行っていないところもオープンに全体でシェアされている結果、フィードバックがチーム全体から入るようになっています。
また例年、ファシリテーターはマネジメントが実施していたところ、私がリードしていることで「上下の固定観念が変った」、「発言しやすかった」、「実施サポートをしたい」などの声も入るようになりました。

まとめ

今回、この『新時代を生き抜く24思考・行動様式 ニュータイプの時代』を読み、チームのメンバーとつながり、全員で一緒につくっている状況にあることを実感しました。これはコロナ禍という要素も否めませんが、私を含めチームの中にあったオールドタイプの思考を少しニュータイプにシフトチェンジしたことがチームの活性につながったと感じています。まだこれからですが、「みんなのオムニケーション!」の形を構想しつつ、チームメンバーと共創していきます。

最後に、山口氏はオールドタイプを否定しているのではなく状況に合わせてオールドタイプとニュータイプを選べる柔軟性が新時代には重要だと言っています。
あなたの中にある、ひょっとしたら無意味なオールドタイプを見つけたら、見える景色が変わることを期待して少しだけシフトチェンジしてみませんか。

記事の著者

藤生 あゆみAyumi Fujiu

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

美大を卒業しアパレル業界に就職後、渡英。そこで対話を通して学ぶアプローチに理想を見出す。日本に導入するため帰国し、日本語教員になる。30歳で教育ディレクターに就任し、対話型教育モデルをつくるため教員養成・教材開発に情熱を注ぐ。10年ディレクターを務める間にコーチングに出会い、自校に導入。2003年よりコーチとしての活動も開始。異文化コミュニケーションへの見識を活かしユニバーサルチームコーチングを実践中。