脳の使い方を変えるWeメソッド®WSC ホールシステムコーチング®Whole System Coaching

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コーチングの新時代

2021.05.01

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日本のコーチングの歴史は、1997年から始まりました。1994年にアメリカで始まったコーチングは、
1995年国際コーチング連盟(ICF)設立につながり、世界に普及していきました。

コーチングは現在、第3世代に入ったと言われています。
グローバル化が進み、複雑で不確実な現在、働き方が変わっても、チームで協働する機会が増えています。
多様なメンバーとチームで仕事を協働する上で、何に着目したらいいのでしょうか?
そして、これからのコーチングは?

1.第3世代のコーチング

日本のコーチングの歴史は、1997年から始まりました。1994年にアメリカで始まったコーチングは、1995年国際コーチング連盟(ICF)設立につながり、世界に普及していきました。
現在、ビジネス、医療、教育、スポーツなど様々な分野でコーチングが活用されています。

2021年4月現在、世界153カ国に45,336名の会員、および137カ国に34,834名の認定コーチがいる世界最大規模のコーチングの非営利団体に発展しています。
ICFの倫理規定やコア・コンピテンシー・モデル(コーチの能力水準)は、2019年に改定しました。

ソマテック コーチのAmanda Blake氏(著書: Your Body Is Your Brain)がICF アドバンス2020のウェビナーで、コーチングの変化を次のように述べています。

2019年以前は、
・Instrumental(手段・道具)
・Goal-Oriented(目標志向)
・Tools &Techniques(ツール&テクニック)

2019年以降は、
・Transformational(変容・トランスフォーメーション)
・Growth-Oriented (成長志向)
・Process &Relationship(プロセス&関係性)

コーチングは、成熟しています。
お笑い業界は、現在、第7世代が活躍し、業界をリードしています。
100年以上続く食品を提供する老舗は、時代に合わせて、味を少しずつ変えています。
あらゆる業界が、時代に合わせて、進化しています。

コーチングは現在、第3世代に入ったと言われています。

「The art of dialogue in coaching(コーチングにおけるダイアローグ)」で 著者の心理学者、Reinhard Stelter博士によると、
「クライアントの目標達成志向のコーチング」を第一世代、
「システミックな組織開発に向けたコーチング」を第二世代

そして、現在のコーチングは第三世代に入っていると紹介しています。
第三世代は、
コーチングによる対話は「協働して振り返るパートナーとしての機能」

WSCで提唱している「私たち(クライアントとコーチ)で共創する」というWeメソッド®︎の考え方です。

グローバルで複雑で不確実な現在、多くの組織は、チームで行う仕事がどんどん増えています。従業員はレベルを問わず、協働する時間が20年前に比べて、50%増加しているそうです。(Harvard Business Review 2016.1.1)

チームで仕事を協働する上で、何に着目したらいいのでしょうか?

2.心理的安全性

私たちコーチは、組織・チームを対象としたチームコーチングを実施するときに、最初にフォーカスすることは「関係性を構築する」ことです。聴き慣れた言葉でいうと、「場づくり」です。場づくりとは、場を共にする人たちと「パートナー関係を築き続ける」こととも言えるでしょう。

ハーバード・ビジネススクール教授 エイミー・C・エドモンドソン氏(Amy C. Edmondson)が提唱する「心理的安全性(Psychological Safety)」。
「心理的安全性」とは、職場などの組織やチームのなかで、誰が誰に何を言っても拒絶されたり、不利益を被ることがない状態のことを言います。

「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」のことです。

より具体的に言うなら、職場に心理的安全があれば、
皆、恥ずかしい思いをするんじゃないか、
仕返しされるんじゃなかいといった不安なしに、懸念や間違いを話すことができる。
考えを率直に述べても、恥をかくことも無視されることも避難されることもないと確信している。
わからないことがあれば、質問できると承知しているし、大抵同僚を信頼し尊重している。という状態、文化です。

「心理的安全性」は、Googleのリサーチ(研究・調査)で注目を集めました。
2012年から4年間かけて取り組んだGoogleの『プロジェクト・アリストテレス/re:Work「効果的なチームとは何か」を知る』調査結果によると、Google社内で、生産性の高いチームに影響する要因の第一は「心理的安全性」です。

Googleの「心理的安全性」とは、
「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。

Googleでは、Google 社内で効果的なチームの特徴を明らかにするため、「プロジェクト・アリストテレス/Project Aristotle」と名づけたリサーチを実施しました。

調査の目的は、「効果的なチームの条件は何か」という問いに対する答えを見つけ出すことです。

ギリシャの哲学者 アリストテレスの言葉 「全体は部分の総和に勝る」
Google の研究者も、「従業員は単独で働くよりもチームで働いた方が大きな成果を上げられる」と考えていることから、「プロジェクト・アリストテレス/Project Aristotle」と名づけられました。

合計180のリサーチ対象には、業績の高いチームと低いチームが混在しています。
Googleが発表した調査結果によると、チームの効果性に最も重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。

「チームの効果性」に影響する因子を重要な順に示すと次の5つになります。
グーグルで有能なチームになるための5つのカギ

1. 心理的安全性(Psychological safety)
チームメンバーがリスクをとることを安全だと感じ、
お互いに対して弱い部分もさらけ出すことができる

2. 相互信頼(Dependability)
チームメンバーが他のメンバーが仕事を高いクオリティで
時間内に仕上げてくれると感じている

3. 構造と明瞭さ(Structure & clarity)
チームの役割、計画、目標が明確になっている

4. 仕事の意味(Meaning of work)
チームメンバーは仕事が
自分にとって意味があると感じている

5. インパクト(Impact of work)
チームメンバーは自分の仕事について、
意義があり、良い変化を生むのだと思っている

3.これからのコーチング

1994年にアメリカで始まったコーチングは、今年で27年目。1997年に日本で始まったコーチングは、今年24年目です。コーチングは成熟しています。
コーチングは、目標志向(Goal-Oriented)を応援する手段的(Instrumental)な存在から、
より本質的な成長(Growth-Oriented)、蝶のように、幼虫 → サナギ → 成虫に変わる変態(トランスフォーメーション)を協働で、共創する存在に変わってきました。

成長志向で、変容・変態を共創するには、それをつくり出すプロセスと関係性が重要です。

エドモンドソン教授は、著書「恐れのない組織」で、「もはや、優秀な人材を採用すればいいという時代ではない。優秀な人材が、力を合わせて仕事をする必要がある」と言っています。

2017年のギャラップ調査では、「自分の意見は職場で価値を持っている」の項目に対して、「非常にそう思う」と答えた従業員が10人中3人しかいなかった。ギャラップの計算によると、この割合が、10人中6人になれば、組織は離職率を27%、安全に関する事故を40%減らし、生産性を12%高められるとのことです。

リーダーは、心理的に安全な企業風土、従業員が不安を覚えることなくアイデアを提供し、情報を共有し、ミスを報告する風土をとくらなければならない。
このような組織をエドモンドソン教授は、「フィアレスな組織/恐れのない組織」と呼んでいます。
「フィアレスな組織」とは、知的集約的な世界にあって、対人関係の不安を最小限に抑え、チームや組織のパフォーマンスを最大にできる組織と提唱しています。

私たちは、チーム内で、心理的安全性をどのように培っていくのか?

TEDx 「Building a psychologically safe workplace」でエドモンソン氏は、
「4つの心理的安全性を損なう要因と特徴行動」について、下記のように言っています。
私たちには、4つの不安要因があります。

心理的安全性を損なう要因 その結果起こる特徴行動
Ignorant (無知)
無知だと思われる不安
質問しない
Incompetent (無能)
無能だと思われる不安
自分の弱点やミスを認めない
Intrusive (邪魔/煩わしい)
邪魔をしていると思われる不安
アイデアの提案をしない
Negative (ネガティブ/否定的)
ネガティブだと思われる不安
現状を批判しない

Building a psychologically safe workplace | Amy Edmondson | TEDxHGSE

まとめ

コーチングは、成熟しています。
蝶は、完全変態(卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫)です。改善ではなく、変革のパートナーとして、
本質的なクライアントの変容・変態(トランスフォーメーション)をクライアントと共創していくために、コーチングの目的がより本質的に変わってきたことを認識する必要があります。

ゴール・目標達成は、成長の一つのプロセスに過ぎません。
コーチやリーダーに限らず、人の成長に関わる人は、まずは、人が育つ土壌、心理的安全というものを理解して、関係性づくりに継続的に取り組んでいくことが重要でしょう。
ホールシステムコーチング®︎では、クライアントとコーチがWe私たちで、変容・変革を共創できるよう設計しています。

記事の著者

生嶋 幸子Sachiko Ikushima

  • ホールシステムコーチング®共同開発者
  • 国際コーチング連盟マスター認定コーチ(MCC)(関西女性初)
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

株式会社コーチ・アイエヌジー 代表取締役
自社開発したホールシステムコーチング®が2014年国際コーチング連盟(ICF:本部アメリカ)からコーチ・トレーニング・プログラム(ACTP)として日本で3社目に正式に認定される。2000年よりコーチとして活動。エグゼクティブコーチング、企業向けプロジェクトコーチング、コーチ養成スクールなどを中心に人と組織の変革を行う。
2017年国際コーチング連盟グローバル・カンファレンス(ワシントンD.C)でアジア人唯一のスピーカーを務める。