脳の使い方を変えるWeメソッド®WSC ホールシステムコーチング®Whole System Coaching

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動きたくなる目標設定

2023.01.01

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企業内のミドルマネジャー層の方々からよく聞く悩みとして、「組織の目標をメンバー全員と共通認識を持つことが難しい」、「個々人の目標と組織の目標が完全一致しない中で、どうやってやる気を高めたらよいのか難しい」という話を聞きます。

組織にとっても個人にとっても、やりたいと思える目標設定ができれば主体的な行動を促すことにつながり、成果も高まってくるのではないでしょうか?
ここでは、どうすれば組織一丸となって取り組める目標を設定できるのか、私の経験談も踏まえながら考えていきます。

1.良い目標設定とは

良い目標設定にはどのような要素が含まれているのでしょうか?
ビジネスおよびコーチングの世界ではそれぞれ以下の要素を含めると良いと言われています。

■ビジネスにおいてよく言われている目標設定のポイント
ビジネスにおける目標設定ではSMARTの法則を押さえると良いと言われます。
「SMART」とは、以下の要素であり、この要素を押さえることで効果的な目標設定ができます。

・Specific(具体的に):明確かつ具体的な表現になっている
・Measurable(測定可能な):達成度合いが判断できるよう定量化する
・Achievable(達成可能な):到達可能な現実的である
・Related(経営目標に関連した):経営目標に沿っている
・Time-bound(時間制約がある):いつまでに達成するのか、期限が明確である

■コーチングにおける目標設定のポイント
コーチングにおける目標設定のポイントはどうでしょうか?
私たちWSCでは以下の要素を含めることが重要であると考えています。

・肯定的な言葉で表現する
到達したい目標を「〇〇ではない状態」という否定系で表現してしまうと、それを肯定系に置き換えた時の状態が人によって異なります。(例えば、目指したい組織の状態として「ストレスのない状態」と表現した場合、人によって「リラックスした状態」「意見が活発に言い合える状態」「新しいアイデアがどんどん出てくる状態」など想像する組織の状態が異なってしまう)。
そのため、認識を揃えるためには肯定的な言葉で表現することが重要です。

・主語は「私」または「私たち」にする
リーダーの方々と組織をどうしたいか、という話をすると、時々「メンバーを〇〇したい」「メンバーに△△になって欲しい」という表現をする方がいます。この目標だと、メンバーが変わらない限り達成することができません。つまり自分でコントロールできない要素を目標にしてしまっているのです。そのため、目標設定する場合は「メンバーに〇〇になってもらうために、私は(私たちは)△△する」という形で自分が動いて、影響を与えられる表現にすることが重要です。

・ワクワクするような感覚に基づいたイメージを描く
その目標を聞いた際に頭での理解・納得だけではなく、気持ちがワクワクする要素を盛り込めるとより行動につながりやすくなります。

・目標は具体的かつ数量化する
こちらはSMARTで言うSMTを含んだ要素となります。

両者を比較すると、「SMART」の中のSMTはコーチングのポイントにも含まれていますね。そのため、「SMART」+肯定的表現で主語が「私」または「私たち」+「ワクワクする」要素を盛り込めると、より良い目標設定になると考えられます。

2.設定プロセスも重要

目標設定を行う際は、内容だけではなく設定プロセスも本人たちが主体的に動きたくなるか否かに大きくかかわってきます。これは2022.05.01に掲載した「自律的な人材・組織を創る」の2章でも言及しています。

最も主体性が高まるプロセスは、やはり自分たちで考え自分たちで決めることです。
しかしながら、企業内においては上位から目標が提示され、それを組織や個人に細分化していくというプロセスで目標が決まることが多いため、なかなか自分たちで決めるというプロセスを踏めていないという話を聞きます。

3.WSCが提供するチームコーチング

WSCが提供しているWeメソッド®を活用したチームコーチングは、チーム一丸となって取り組める目標設定をする上での1つの解決策になるのではないかと考えます。

チームで何かに取り組む際、私たちが一番初めに実施することは、チームの目標をメンバー全員で設定することです。そのプロセスにはいくつか特徴があります。

(1)「私たち」という言葉を使う
冒頭のリーダー層の課題意識にもあるように、個人の目標と組織の目標が一致していないことはよくあります。そのため、チームコーチングの際も最初チームの目標を考えようと言っても、メンバーは「私はこうしたい」と自分の目標を口にします。
その際にはそれぞれの目標は一旦受け止めたうえで、「私たちとして何を目指しますか?」というように「私たち」という言葉を使います。この言葉を使っても、最初は視点が切り替わらず個人の目標を話し続けるのですが、何度も何度も「私たち」を使うことによって、徐々に視点がチーム視点に切り替わり、「私たち」で目指す目標を口にするようになっていきます。

(2)長期目標(ビジョン)も描く
そのプロジェクトやチームの短期目標を決める場合でも、必ずそれが実現した先に何があるのか、長期目線でのビジョンも描きます。現実的な実現目標に加えて、その先にどのような世界観が広がっていくのかを考えることを通して、ワクワク感を醸成しています。

(3)頭だけではなく、五感を使う
チーム目標を決める際は、ただ話し合うのではなく、大きな模造紙を広げ色とりどりのペンを使い、絵や図、キーワードを書きながら対話を進めていきます。私自身もこのチームコーチングを経験したことがありますが、このプロセスには以下のような効果があると感じています。

・見える化することにより具体的に考えやすい
・他者の書いたものにかぶせていくことでアイデアが広がりやすい
・色とりどりのペンを使うことで見た目に鮮やかで楽しい気分になってくる(ワクワク感を感じる)
・言葉で表しづらい状態も絵を描くことで、「これだ!」と意識統一できて、そこから目標を具体化していける

2020年よりコロナ禍になり、Zoomなどオンラインでチームコーチングをする機会も増えました。その場合も実際に集合している時と同様に、私たちでチーム一丸となるよう、臨場感、関係性をつくり、ビジョン・目標を共創できるよう、チームコーチングを進めています。

集合で使っていた大きな模造紙は、オンラインツールのホワイトボードに変わり、ツールの色とりどりのペン、絵や図を使い、対話を見える化しています。オンラインでは、パッと浮かんだアイデアの書き込み、書き直しなど、対話の見える化の修正がすばやくできることは、メリットの一つと言えるでしょう。

(4)最後に全員署名する
長期目標・実現目標・プロセス目標が具体的になり、全員の合意が取れたら、模造紙に一人ひとり署名をします。これにより、コミットメントにつながり、自ら実現に向けて動きだそうという意志が高まります。

このように、必要な要素を押さえるとともにプロセス自体にワクワク感を醸成したり、目標を具体化したりするしかけを組み込んでいます。

まとめ

企業においては時間的な問題やある程度決まった目標が提示されるという理由からなかなかメンバー全員で目標を考えるプロセスが踏めていない状況です。しかしながら、時間を取ってでもこのプロセスを踏むことはその後の主体性に大きな影響を及ぼし、ひいては組織の成果にも変化が現れると考えます。

業務内容やプロジェクト1つ1つの全てで、このプロセスを踏むことが難しいとしても、例えば期初にメンバー全員で自分たちの組織をどのような組織にしたいか、という目標設定をするなど、できるところから取り組んでみるとよいのではないでしょうか。

記事の著者

吉岡 恵Megumi Yoshioka

  • WSCコークリエイター
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

システムエンジニアを経て、企業向け人材育成・組織開発に従事。
次世代経営者育成を中心に、様々なプロジェクトの企画・設計・運営実績を持つ。
現在は独立し、脳科学や心理学をベースとしたアプローチで組織開発・人材育成を行うとともに、研修講師としても活動している。