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小企業のマネジメントに活かすコーチング
2024.09.01
アメリカの経営学者ピーター・ドラッカー(1909~2005)は小企業のトップマネジメントについて、「小企業は大企業以上に組織的かつ体系的なマネジメントをもたないといけない」(ドラッガー マネジメント下巻)と言っています。
中小企業に30年勤めてきた私にとって、このドラッガーの言葉は実感を伴って心に響きました。
小企業のオーナー経営者は会社を起業し、製品やサービスが世間に認められることで経営規模を拡大し、人を増やしていきます。その過程で、小企業は柔軟で迅速な対応が可能である反面、組織も単純なことが多く、社長の考え方ひとつで方針が左右されることは容易に予想していただけると思います。ある程度の売上(例えば5億円程度)までは、オーナー経営者の舵取りで会社は大きくなっていくものだと私も経験しましたが、さらに会社を大きくしていくには、組織的かつ体系的なマネジメントの活用が求められると考えました。
そこから、ピーター・ドラッカーを学びはじめ、組織内コーチとしてマネジメントとコーチングをうまく融合できないか?
私自身が実際に社内で試行錯誤をした経験をお伝えします。
1.マネジメントとコーチングについて
最初に、マネジメントとコーチングについて、改めて理解を確認しておきます。
マネジメントとは、アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーの著書『マネジメント』(1973年刊行)から生まれたとされています。そこでは、マネジメントとは、「組織に成果をあげさせるもの、経営の仕方、仕組み」「経営者・幹部などの組織の成果に責任を持つ人」と定義しています。そして、マネジメントの役割の1つは、仕事を生産的にし、働く人たちに成果をあげさせることである、とあります。
一方で、WSCではコーチングを『実現する。達成する。共創する。』と定義しています。
クライアント(個人・組織)が本当に実現したいことを手に入れるために、クライアントとコーチが共創することです。
そして、ICF(国際コーチング連盟)では、「クライアントが自身の可能性を公私において最大化
できるように、コーチとクライアントがパートナー関係を築き、
思考を刺激し続ける創造的なプロセスである」
と定義しています。
*ホールシステムコーチング®︎テキスト (ICFジャパン翻訳を加筆)
*ICF(国際コーチング連盟)とは世界最大のプロフェッショナルコーチの非営利団体
そして、マネジメントとコーチングの融合とはどういうことなのでしょうか?
まずはチームコーチングの観点から見てみましょう。
2.主語を「私たち」に変える
マネジメントの役割の1つは、「仕事を生産的にし、働く人たちに成果をあげさせることである」(ドラッガー マネジメント上巻)ですが、チームコーチングでは、「成果をあげさせる」という表現は、「成果を上げさせる側」と「成果を上げる側」が存在し、お互いの関係は「対立関係」という考え方になります。チームコーチングでは〇〇させるという概念はありません。
あるのは対等な関係性です。
私はマネジメントの役割を伝える際は、WSCで学んだ主語を「私たち」に変えています。
「マネジメントの役割は、私たちの仕事を生産的にし、私たちの成果を上げることである。」
いかがでしょうか?
主語を私たちにすると、「成果を上げさせる側」と「成果を上げる側」という対立関係から、「私たち」が共に創り上げるという目線で、「成果をあげる」に変わります。
また、ドラッカーも著書「経営者の条件」で、身に着ける習慣の1つとして、【「私は」ではなく「我々は」を考える】とあります。
社長と社員の距離が近い小企業だからこそ、対立関係ではなく、全員が一つになって目標を目指すことは非常に大切です。
主語を「私たち」に変えることで、社長もチームに含まれ、私たちとして主体性が生まれます。
3.マネジメントにチームコーチングを導入する
小企業のマネジメントに必要とされることとして、「我々の事業は何か?」「何であるべきか?」を問い、それにこたえることである(ドラッガー マネジメント下巻)とあります。
実際に私は社内で、新規事業立ち上げに伴い「私たちの事業は何か?」「何であるべきか?」、この問いについてチームコーチングをしました。
チームコーチングについては、
WSCコラム「チームコーチングとファシリテーションの違い」をご覧ください。
チームコーチングの結果、私たちの事業は「取引先の“手間のかかる仕分け業務”を、私たちが受注し、(取引相手の)業務を軽減化する」と定義しました。今まで私たち社内の“コスト”として見ていた業務が、実は取引先の問題を解決できる自社の強みだと気づいたのです。そこに気づいたことで、私たちは、半年以内に“自社の強み”をサービスとして商品化し、新しい販路開拓のため、全国の企業に紹介を始めました。
さらに私たちは、「3年で1億円の売上をつくる」という次の目標設定へと取り組み始め、現在も目標に向けて取り組んでいます。「我々の事業は何か?」「何であるべきか?」についてチームコーチングで扱うことで、話しやすい環境がつくられ、積極的にチャレンジできる社内の雰囲気が醸成されたように感じます。
4.1on1ミーティングの必要性
「小企業の最大の強みは、トップの人間が社内の重要な人間全員の望み、考え、仕事の仕方、強みと弱み、実績と可能性を知りうるところにある」(ドラッガー マネジメント下巻)
企業トップと現場のスタッフの距離が近いことは、小企業の強みの1つでしょう。そして、その強みを活かすめには、トップがスタッフ一人一人と質の高い1on1ミーティングをおこない、それぞれへの理解や未来の可能性を発展させるために双方向のコミュニケーションを取る風土を育てていくことが強い組織力の一つになっていくのではないでしょうか。
1on1ミーティングついては、WSCコラム「1on1ミーティングとコーチング」をご覧ください。
WSCでは、コーチング講座にて現場で使える1on1ミーティングについて学びます。私も1on1を学び、マネジメントにおいて1on1の重要性を理解したつもりでしたが、いざ1on1をやってみると
「それは君自身の仕事でしょう。」「その話はいったい誰に対する意見なの?」「君自身がもっと計画的に動いてくれないと…」とついつい、スタッフの言葉に私が反応し言葉を返していました。ドラッガーがその場にいたら「話すな、聞け」と怒られてしまいそうです。
まとめ
私がドラッガーを学び組織経営に役立てたいと感じたのは自社の売り上げを5億から10億円にするためです。私の上司たちは自身の経験、直感力、胆力で売り上げをつくってきたのを間近でみてきました。今、組織を受け継ぎ、さらに売上・利益ともに伸ばしていくには、理論に基づいた再現性のある手法を取り入れる必要を感じています。
だからこそ、ドラッガー経営思想塾へ参加し、ドラッガー理論を学び始めると、コーチングは小企業の組織経営に活かせる要素が多くあることに改めて気づきました。コーチングで学んだマインド、スキル、経験とマネジメントを融合し、小企業の成果をどこまで上げていけるか、チャレンジを続けていきます。
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