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意図をもって「質問」 を選択する

2024.08.01

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検索エンジンに「質問」と入力すると、質問に関する書籍を何ページにも渡って表示してくれます。
質問がコミュニケーションに有効であると考える人の多いのが想像できます。
また「質問力」という表記もたくさん見かけました。質問は能力のひとつという認知があるようですね。

ここでは「質問」について探求していきます。

1.質問をする人とその目的

最近、誰にどんな質問をしましたか?
また、質問をする機会は多いですか、少ないですか?
(ここで既に3つも質問をしましたね)

質問を辞書で調べると 「わからないことや知りたいことなどを問いただすこと」(デジタル大辞泉、Oxford Languages and Googleなど) と書いてありました。
いくつかの辞書を見ましたが、概ねどれも同じ意味の回答でした。
何だか味気なさを感じ、質問する人とその目的について考えてみました。

質問をする機会の多い職業と、目的をあげてみます。
・記者:人々が関心のありそうな情報を収集して記事にする。
・医者:病状や症状を把握し、治療や処方を検討する。
・弁護士:クライアントの問題解決、または裁判で有利になることを目指す。
・営業職:顧客のニーズを探り、適した商品を提案する。
・トーク番組の司会者:視聴者が知りたいであろうことを参加者から探る。
など

目的がそれぞれにあるので、「わからないことや知りたいことを問いただす」だけには収まらないようです。
質問のしかた次第では、未来や事の結果が大きく変わりそうです。

2.質問者の意図

職業別に質問の目的があるとして、日ごろ私たちが会話の中で他者に投げかける質問には、
どんな意図があるのでしょうか。

『今日は暑いですね?』
『娘さんは、何歳になりましたか?』
など、アイスブレイクのようなものから、核心に触れるようなものもあるでしょう。

それではここで、いくつか質問の例をあげてみますので、質問者の意図を想像してみてください。

『あなたは今月に入ってから3回も遅刻をしているそうですね。周りのメンバーが、電話を受けたり
在庫を確認したり、あなたの仕事をフォローしてくれています。社会人になってもう2年ですよ。
いったいどう考えているんですか?』

『来週の金曜日までに資料を仕上げてきて欲しいです。できますか?』

『これ、とっても美味しいでしょう?』

『彼女は本当にルーズで困るわ。男性に人気があるみたいだけど、みんな彼女のいい加減なところを
知らないのよね。ねぇ、どう思う?』

質問者の意図は、どのように推測しますか?
4つ目は私が19歳の頃、自身のパートナーに実際にした質問です。
私の意図ですか?私のパートナーも彼女に興味があるのではないかと恐れて、彼女の評価を下げようとした質問です。一見質問のようですが、私の嫉妬を押し付けているのがわかるでしょうか。
若い時代とはいえ、ちょっと自分が怖いです(笑)
これら4つの質問に共通して見えるのは、相手に意識が向いておらず、質問者の誘導が働いています。
これでは質問を受取った相手が考える余白(スペース)は生まれないでしょう。

当時、私のパートナーは 『うん・・・』 とだけ答えていました。

3.意見や考えを知りたい場合の質問

相手に考えてもらいたい、そして意見や考えを知りたい場合には、どんな質問が効果的でしょうか。

限定質問と拡大質問については、ご存じの方も多いでしょうから、軽く触れておきます。

限定質問:答えが 「はい」 または 「いいえ」 になる質問。回答は1つ。
拡大質問:自由回答。回答は何通りもある。

拡大質問
(オープンクエスチョン)
限定質問
(クローズドクエスチョン)
特徵 自分の内側に答えを取りにいき、自由に答えることができる 答えが限定される
効果 相手が自ら考える
創造性を発揮できる
気づきを促進する
コミットメント(約束)をする
事実関係を明確にする行動や情報を確認する
答えを早く出す
コミットメント(約束)を確認する
質問の形 5W2H
・When いつ
・Where どこで
・Who 誰が(R2)
・What 何を(L1)
・Why なぜ(R1)
・How どのように(L2)
(How much, How many
いくら[金額、数量は])
《例》「どうすればできると思いますか?」
「何をやりますか?」
「どうして〜をやりたいのですか?」
yes、noで答えられる質問
(例)「~はできると思いますか?」
「~をやりますか?」

ホールシステムコーチング®︎より

相手に考えてもらいたい、そして意見や考えを知りたい場合には、拡大質問が有効でしょう。
2章で挙げたような質問者の誘導は手放し、相手に意識を向けて5W●Hの質問をつくります。

私のクライアント(企業の社長)はスタッフに考えてもらいたいからと、拡大質問の習慣を身に着ける訓練の真っ最中です。
私はレッスン相手として、ご本人から限定質問が出てきたら、『はい』 または 『いいえ』 とだけ答えるように
しています。
直ちに拡大質問に言い換えていらっしゃいます。
限定も拡大も、それぞれに役割があります。
意思決定などには、限定質問がパワフルな効果を発揮する場合もよくあります。
質問者の意図次第で、質問のしかたを選択できるでしょう。

4.コーチの質問

「質問」は、コーチング基本スキルの1つです。(あとの2つは、「聴く」と「伝える」です)
コーチのことを『質問のプロ』と呼ぶ人もいます。

コーチの質問は、コーチのための質問(コーチが知りたい情報の収集)ではなく、クライアントのためにする仕事です。

ICF(国際コーチング連盟)の定めるコア・コンピテンシー・モデルに記載のある、「質問」に関係する箇所を一部取り上げてみます。

◆クライアントが伝えている以上の何かがあることを認識し、問いかけている。
◆クライアントの考え方、価値観、ニーズ、欲求、信念について質問している
◆クライアントが現在の思考を超えて探索していくことに役立つ質問をしている

もし自分に意識が向いていれば、これらの質問ができるでしょうか?そもそもコーチが質問をする意図・目的は何でしょうか?

コーチングはクライアントのための時間であり、本質的な目的は 「成長」 と 「幸せ」 の 「探求」 です。

ゆえにコーチはクライアントに意識を集中し、役に立つ質問をしようと努めます。

まとめ

ご自身の意図に照し合せ、どんな質問が効果的かを考えてみるのはいかがでしょう。
くれぐれも、誘導は相手に伝わります。
仮に欲しい回答があったとしてもいったん相手に意識を集中し、何が出てくるかを待ってみてください。
手ごたえを実感することでしょう。

記事の著者

船木 優子Yuko Funaki

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

メーカー企業にて営業アシスタントを経て、新人スタッフ育成を学び担当する。テーマパークの開業準備を経験した後、人材育成の部門にてマネジメント、キャリアディベロップメント、アルバイトスタッフ育成など幅広く携わる。2004年にコーチングと出会い、社内に導入する。その後、外食産業系企業で店長や女将業の現場経験を積み、2013年に独立。現在は、プロコーチとして企業の人材育成、組織開発を行っている。