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1on1ミーティングとコーチング

2021.11.01

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新型コロナウイルス禍が1年半続いています。
リモートワーク、事業環境も大きく変わり、多くの企業が変革を求められている中、
これまでの経験や物差しが通用しない事象が増えました。

この混沌とした状況は、
Volatility(変動性・不安定さ)
Uncertainty(不確実性・不確定さ)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性・不明確さ)
の頭文字「VUCA」で表現されます。

この「VUCA」の時代、企業では1on1ミーティングが注目されています。
2020年7月に行った「日本の人事部」の調査によると、調査対象の約4割の企業が1on1ミーティングを導入していました。
コミュニケーションの重要性が企業に認識される一方、現場から失敗や悩みの声も挙がっています。
オンラインでの1on1ミーティング実施も悩みに拍車をかけています。

そして、1on1ミーティングの導入支援のご依頼いただく機会も増えています。
今回は、私が1on1ミーティングの導入支援を行った際に気づいた留意点も含めて、
企業での1on1ミーティングを効果的に実施するには、どうすればよいかを考察します。

1.企業での1on1ミーティングとは

企業での1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う対話を意味します。
企業での1on1ミーティングの場合、週に1回、最低でも月に1回実施します。
また、1回の実施時間は30分程度で設定している企業が多いようです。もちろん企業やチーム、職種によっても異なりますが、「短いサイクルで定常的に実施する」のが、企業での1on1ミーティングの大きな特徴です。

また企業での1on1ミーティングの目的は、「部下の成長を促進する」です。
上司が報告を求め、指摘するような「情報収集かつ管理のための時間」ではなく、部下の現状や悩みに寄り添いながら、パートナーとして、部下の能力開発や成長支援を目的とした「部下のための時間」です。

2.企業での1on1ミーティングが求められる背景

最近企業での1on1ミーティングが注目される背景には、在宅勤務やオンライン会議などが増え、部下の様子がわからない、意思疎通が難しい状況があります。
そして現実的な実施目的としては、社員の
「離職防止」
「メンタル不全防止対応」
「モチベーション向上(または受動的対応からの脱却)」
が1on1ミーティングで解決するのではないか、企業の経営層から大いなる期待を感じます。(実際ご相談も多くいただきます)

かつて上司と部下の対話といえば、半年に1度の目標管理面談が主流でした。
上司からのアドバイスや評価など、上意下達の情報連携がなされ、双方向の会話ではありませんでした。

そのためか、私がヒアリングした際、上司たちは
「つい答えを言ってしまう」
「部下が答えに窮して黙り込んでしまう。その時間が耐えられない、待てない」
「部下の話よりも自分が長く話してしまう」
と悩み、疲弊していました。

また部下たちにもヒアリングしたところ、
「何を話せばいいかわからない」
「仕事の話や、正解以外は口に出してはいけない気がする」
「話すことがないのに、上司に時間を取ってもらって申し訳ない」
とネガティブな意見が上がっています。
企業での1on1ミーティングが有意義な時間にできていない現状が伺えます。

3.企業での1on1ミーティングとコーチング

では企業での1on1ミーティングとコーチングと何が同じで何が違うのでしょうか。
次の図はホールシステムコーチング®︎におけるコーチングの定義です。

コーチとクライアントがパートナー関係を築き共創するのがコーチングです。
コーチングスキルやコーチングマインドの多くは1on1ミーティングと共通しています。ただし、目標面談時の関係性を踏襲したままでは効果的に活用できません。

スキルを活かす大前提に、上司と部下の間に心理的安全性が必要です。
心理的安全性とは、ハーバード大学で組織行動学を研究しているエイミー・エドモンソン氏が1999年に発表した論文「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」の中で、「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と述べています。

この心理的安全性こそ1on1ミーティングに真っ先に必要なものです。
心理的安全性がない状態だと、「ここでは何を話してもいいよ」との上司の言葉は、部下には「(言葉だけ)今日は無礼講だからね」と同義に聴こえてしまいます。

4.何から始めるのか

ではそのために何から始めればいいのでしょうか。
まずは上司が自分の環境を整えましょう。
コーチングの「環境設定」のフェーズです。
「お腹(丹田を意識する)・呼吸(ゆっくり深く呼吸する)・周辺視野(前と横を同時に見る)」を行うことで、落ち着いた気分になることでしょう、

そして、企業での1on1ミーティング実施時は、更なる準備をお勧めします。
それは「事前のマインドセットとして、自分のご機嫌を取ること」です。
例えるなら、来客前に家のお掃除をして、歓迎の気持ちを準備するような感じです。

具体策としては、自分の取扱説明書である「ハッピーになる瞬間カード」を準備するのもオススメです。
平時に自分と対話し、この空欄を埋めて普段からカードを携帯しておきます。

そしてミーティング前、これを活用して自分をハッピーな状態に持っていき、自分のご機嫌を取っておくのです。
試合前のアスリートのように自分自身のウォーミングアップを行ってから、部下を迎えましょう。ご機嫌な人と一緒にいると、相手もご機嫌になれます。

事前準備を行うことで、第一声を発する前に心理的安全性の実現が可能になり、ミーティングスタート時から「ハッピーな瞬間を共有、共創する関係性」になれるでしょう。

まとめ

かつては人が教えてきた知識も「検索すれば調べられる」時代になったため、上司が部下に教えられることは減ってきました。むしろ一緒に考える機会の方が必要となるでしょう。
上司から部下への一方的なコミュニケーションではなく、対話するコミュニケーションがますます必要になります。1on1ミーティングの浸透は、「VUCA」時代の新たな幕開けとなるでしょう。
人材活用に1on1ミーティングがこれから一層活用されることを、心から願っています。

記事の著者

矢頭 聖子Kiyoko Yatoh

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

コーチ&ファイナンシャルプランナー。
元金融系システムエンジニア。2005年に独立。
現在は経営者や管理職、就職・転職・起業志望者を対象にコーチングとファイナンシャルプランナー両方のスキルを活かした個別相談やセミナーを実施。
また中高生やその保護者へのキャリア教育、金銭教育にも取り組んでいる。