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ONLYNESS & We | オンリーネスとWe

2025.11.01

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ICFコンバージ2025 in サンディエゴ・アメリカ(10/23-25)で開催されたICF設立30周年カンファレンスのクロージング キーノート(閉会基調講演)のスピーカー、ニロファー・マーチャントの著書『ONLYNESS/オンリーネス』(日本語版・大和書房)が出版されていましたので、先に読んで講演に備えようとしました。また、現地で基調講演を聴いての感想や気づきはメルマガなどで共有したいと考えています。

1.オンリーネスとは

オンリーネスとは何か?
「一人ひとりのオンリーこそが強みなのだというアイディアを世界に広げたい」と、ニロファー・マーチャント氏は述べています。彼女が生み出した造語“Onlyness”には、地球上の誰一人として無意味な存在はいない、という力強い前提があります。75億人すべてが固有の価値と視点を持っているという考え方です。

彼女はまた、「ブランド」と「オンリーネス」の違いについても言及しています。
ブランドの目的が“自分の価値を定義すること”だとすれば、オンリーネスの目的は“関係性の中で価値を生み出すこと”にあります。
つまり、自分をどう打ち出すかではなく、誰とどんなつながりを築くか、という視点です。

マーチャント氏は、「誰もが本当の自分を隠している」と言います。デロイト・コンサルティングの調査によると、61%の人が「本当の自分を見せていない」と答えています。社会や組織の中で「調和する」ために、自分を覆い隠し、多数派に合わせるような“カバリング(覆面行為)”を行ってしまう―。
しかし、オンリーネスは孤独(loneliness)ではありません。研究によると、グループの30%が少数派の意見を共有すると、「異質な存在」ではなく、個々の価値が尊重されるようになります。
つまり、自分らしさの発揮は、他者と切り離すものではなく、むしろ共感やつながりの起点になるのです。

2.10%の仲間がいれば変化は起こせる

最新の研究では、たった10%の人々が前向きに取り組むだけで社会の変化が起こせるとされています。
重要なのは、オンリーネスを軸に、共通の目的を共有し、真剣に取り組む仲間を見つけることです。
マーチャント氏は、「対話こそがすべての解決の鍵であり、リーダーとして成功するうえで最も大切な力は“聴く”ことだ」と述べています。志を同じくする人々と力を合わせ、互いのアイデアを実現する―そのための関係性が、ネットワーク時代における変革の推進力なのです。

3.オンリーネスとWeハーモニーは共存するのか?

ここで、弊社が提唱するWeメソッド®︎との関係に触れたいと思います。
Weメソッド®︎とは、「個を超えて、私たちのハーモニーで新しい文化を共創する」ためのアプローチです。

海外のコーチやリーダーへの紹介ウェビナーでは、次のような質問を多く受けました。
「“We”を主語にすると、個人のオーナーシップ(主体性)が失われるのではないか?」
「“私たち”になることは、“私”を犠牲にすることではないか?」
「どうすれば“Iパーソン”から“Weパーソン”にシフトできるのか?」
私の答えはこうです。

① “We”はいつも“I”を含んでいる。
“We always includes I.”
「私」と「私たち」は対立ではなく統合の関係にあります。Weメソッド®︎では、I(主体性)を弱めるのではなく、Iを含んだWeを育てます。Weが成熟するほど、個々のIはより明確に機能し、責任感と創造性が高まります。

② We=Collective Ownership(集合的なオーナーシップ)
集合的オーナーシップとは、個人の責任を薄めることではなく、
「Each person’s ownership contributes directly to the shared outcome」――
それぞれのオーナーシップが全体の成果に直接つながるという考え方です。

③ オーケストラとジャズの比喩
この関係性を理解するには、「オーケストラ」や「ジャズバンド」を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
オーケストラでは、各奏者が自分のパートに完全な責任を持ちつつ、全体の調和を創ります(Collective Harmony)。
一方、ジャズは、個々の即興的な表現が響き合いながら新しい音楽を生み出す(Creative Harmony)。
どちらも、「I」と「We」が同時に息づいているのです。
ブレネー・ブラウンも著書でこう述べています。
「周囲に無理に合わせようとする行為こそが、親密な一体感を生む最大の障壁である」。
自分を抑えて調和を保とうとするのではなく、自分らしくあることが、真のハーモニーを生むのです。

まとめ

コーチングで言う「セルフィッシュ(自分を大切にする)」という概念は、オンリーネスと重なります。
個がしっかり立っているほど、Weハーモニーは豊かに共創されていくのです。
実際、チームコーチングの現場でも、個々が自分らしさを発揮できる組織ほど、変革の推進力が高いと感じます。
「私」か「私たち」か、という二者択一ではなく、「私」と「私たち」を同時に育てる。
個人の能力開発( I )と組織の能力開発( We )は、対立するものではなく、互いを支え合う関係にあります。
オンリーネスがWeに響き合うとき、そこから新しい文化と未来が生まれていくことでしょう。
私たちの調和を共創していきましょう。

記事の著者

生嶋 幸子Sachiko Ikushima

  • ホールシステムコーチング®共同開発者
  • 国際コーチング連盟マスター認定コーチ(MCC)(関西女性初)
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

株式会社コーチ・アイエヌジー 代表取締役
自社開発したホールシステムコーチング®が2014年国際コーチング連盟(ICF:本部アメリカ)からコーチ・トレーニング・プログラム(ACTP)として日本で3社目に正式に認定される。2000年よりコーチとして活動。エグゼクティブコーチング、企業向けプロジェクトコーチング、コーチ養成スクールなどを中心に人と組織の変革を行う。
2017年国際コーチング連盟グローバル・カンファレンス(ワシントンD.C)でアジア人唯一のスピーカーを務める。