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コーチに必要なアンコンシャス・バイアスへの理解

2025.10.01

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国際コーチング連盟(ICF)のコア・バリューは、「プロフェッショナリズム(専門性)」「コラボレーション(協働)」「ヒューマニティ(人間性)」「エクイティ(公平性)」です。
公平性を体現するために私たちコーチは、自分自身の意識的および無意識的な偏見の体系的なパターンに気づくことが求められています(ICF倫理規定参照)。
コーチに必要なアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への理解とは何なのかを考察します。

1.「アンコンシャス・バイアス」とは何か?

アンコンシャス・バイアスとは、自分が意識せずに持っている先入観や偏見のことです。性別、年齢、国籍、職業、学歴、話し方、服装など、さまざまな要素に対して人は無意識に判断をくだしています。バイアスは人間の基本的な生存のメカニズムの一部であり、人間ならば誰しもバイアスを持っています。

バイアスは、人間が迅速に判断するための「脳のショートカット機能」として働きますが、コーチングのようにフラットで開かれた対話の場面では、障害にもなりうるものです。

2.アンコンシャス・バイアスがコーチングにもたらす影響

たとえば、あるクライアントが「将来起業したい」と話します。コーチが「この人にはその能力がなさそうだ」と無意識に判断してしまうと、その後の質問やフィードバックが制限され、本来クライアントが持っている可能性を見誤るリスクがあります。

このように、アンコンシャス・バイアスはコーチングの質を左右する要因となります。したがって、コーチが自身のバイアスを認識し、それをコントロールできるようになることで、より深く、効果的なコーチングが可能になるでしょう。

一方、コーチがクライアントの背中を押すだけがコーチングではありません。コーチはクライアントが実現可能かどうか、または実現できるように、多方面からエコロジカルチェックをして、クライアント自身が最善の選択をできるようにサポートすることも重要です。

*エコロジカルチェックとは、クライアントのエコシステム(人生全体・システム全体)への影響を確認します。クライアントの目標や計画が、その人の全体的な生活や環境にどのような影響(自分自身と周囲)を与えるかを事前に話すプロセスです。

3.バイアスに気づくための実践方法

コーチはどのようにしてアンコンシャス・バイアスを扱うことができるのでしょうか?
第一歩は「自分にもバイアスがある」と認めることです。これは決して悪いことではありません。人間である以上、誰にでもある自然な反応だということを理解する必要があります。

そのうえで、以下のようなバイアスに気づく力(メタ認知力)を高めるトレーニングが有効です。
①ジャーナリング(記録)
自分の内面を可視化する方法です。セッション後、コーチとしての自分の発言や態度、反応を振り返り、「どうしてその言葉を選んだのか」「どんな感情が湧いたのか」を書き出すことで、自分のバイアスに気づくきっかけが生まれます。
例)クライアントのキャリアについて、「あなたの年齢での転職は少しリスクがあるかもしれませんね」とコーチが発言したとします。セッション終了後、ジャーナリングを通じて、「どうして年齢=リスクと無意識に捉えたのか?」、「これは社会の一般的な価値観に影響されていないか?」と問い直すことで、年齢に関するバイアスに気づけるかもしれません。

②多様性トレーニングへの参加
自分とは異なるバックグラウンドを持つ人々と対話を重ねることです。ジェンダー、文化、宗教、世代、性的指向など、さまざまな視点に触れることで、無意識のうちに持っている「当たり前」に気づくことができるでしょう。
例)あるトレーニングで、参加者が「リーダー像」について話し合いました。多くの日本人参加者は「リーダー=決断力がある・率先垂範型」と答えた一方、海外からの参加者は「聞き上手・共感力がある」といった特徴を挙げました。このような経験を通じて、自分が属する文化の枠組みに気づくことができ、コーチとしての視野も広がります。

③フィードバックを受け入れる
自分では気づきにくいバイアスは、他者からの視点によって初めて見えることがあります。クライアント、同僚、メンターなどからのフィードバックを受け入れることは、痛みを伴う場合もありますが、成長の大きなチャンスです。
例)コーチが女性のクライアントに対して繰り返し「家庭との両立は大変ですよね」と発言したところ、クライアントから「それは性別による思い込みではありませんか?」とフィードバックをもらいました。コーチ自身は良かれと思った発言でしたが、そのフィードバックによってジェンダーに関するバイアスに気づくことができました。

④コーチ自身がコーチングを受ける
コーチである自分も、一人の人間として思い込みや偏見を持っています。だからこそ、定期的にコーチングを受けることで、無意識に影響する価値観や信念を言語化・整理することが重要です。
例)コーチ自身の「仕事は効率重視であるべき」という信念が、クライアントに「早く成果を出す」という圧力になっていると、自身のコーチングセッションの中で気づきました。そこから、「プロセスを大事にする」、「ゆっくり考える時間も尊重する」スタイルに転換。結果としてクライアントとの信頼関係が深まり、コーチングの質が高まりました。

4.よりよいコーチングのために

アンコンシャス・バイアスを認識することで、クライアントのバイアスにも気づきやすくなるという利点があります。クライアントが自分自身の可能性を制限している無意識の思い込みを抱えている場合、それに寄り添いながら問いを共有することで、思考の枠を広げるサポートができるでしょう。

つまり、コーチ自身のバイアスへの気づきは、クライアントへの深い理解と支援にもつながるのです。

まとめ

ここまで、アンコンシャス・バイアスへの理解について考察してきました。
私は以前、身体障がい者の方の旅行をサポートするというボランティアに参加したことがあります。初めて食事やトイレの介助をさせてもらいました。お風呂でのこと、相手の体をふいた後、待たせてはいけないと思い、自分が先に服を着ていました(順序は間違っていたのだと思います)ふと見ると、その方は自分で洋服を着ていました。

私は、介助が必要に違いないというアンコンシャス・バイアスを持っていたのです。何が必要かを訊けばよかったのに、その方のできることを勝手に奪っていたのではないかと、とても申し訳なく感じた経験があります。

自分自身のアンコンシャス・バイアスは、コーチングに限らず、仕事や家族などあらゆる場面にあります。ぜひ立ち止まって確認し、気づいたら、別の見方もあるのではと考えてみてください。可能性を応援しあえる世界に近づくのではないでしょうか。

記事の著者

コークリエイター・ちえCo-creator Chie

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ