脳の使い方を変えるWeメソッド®WSC ホールシステムコーチング®Whole System Coaching

  • Tweet
  • Share
  • Line

今求められるリーダーシップとは

2021.09.01

  • Tweet
  • Share
  • LINE

私は人材育成の仕事をしている中で、日々多くのリーダー層の方々と接しています。そのような接点の中で、リーダー層の方々が思い描くありたいリーダー像や、求められるリーダー像が変化してきていると感じています。

私自身の経験談を踏まえ、今求められるリーダーシップについて改めて考え、まとめました。

1.リーダー像の変化

リーダーとはどのような人か、という問いに、数年前までは多くの人が
・大きなビジョン・目標を示し、自分が先頭にたって力強くメンバーを引っ張っていく人
・適切に指示・命令をして成果を出す人
・カリスマ性のある人
という要素をあげていました。今でもこの要素は多数あがってきます。その一方で最近は次のような要素をあげる方も増えています。
・部下に寄り添う人
・部下の意見に耳を傾けてくれる人
・多様性を活かして成果を出す人
・信頼される人

そして、皆さん自身がどのようなリーダーになりたいか?という問いにはほとんどの方が後者のリーダー像をあげます。前者のリーダー像はなりたくないという人もいれば、憧れはあるが自分には無理という人もいます。

なぜこのように変化してきているのでしょうか。それには様々な要因があるとは思いますが、以下のような環境変化も大きく影響しているのではないかと思います。
・VUCAの時代と言われるように、変化も激しく先も見えない現在において、リーダー一人で的確に指示を出し、組織を導いていくことが困難になっている
・共に働く人が組織内の人だけではなく、他社との協業やお客様とのコラボレーションなど多様になってきている
・リーダー層とメンバー層との価値観も大きく異なり、一人ひとりの価値観や働き方も多様になってきている

つまり、先の見えない環境下においては、多様な人の英知を集結して成果を出すことが必要であり、そのためには、一人ひとりの個性に寄り添いながらその能力を引き出していくことが昔以上に求められるようになっている、ということだと思います。

2.リーダーシップとマネジメントの違い

そもそもリーダーシップとは何なのでしょうか。マネジメントとはどう異なるのでしょうか。双方ともに様々な定義がありますが、書籍「サーバントリーダーシップ入門」の中では以下のように述べられています。

・リーダーシップ
⇨信じてついていってもいいと思える人に、フォロワーたちが喜んでついていっている状態
⇨フォロワーが目的に向かって自発的に動き出すのに影響を与えるプロセス

・マネジメント
管理のための仕組みや予算、評価権などの制度、仕組みをよりどころに、他の人々を通じてことを成し遂げること

どちらも他者に影響力を及ぼすという点では同じですが、その内容は大きく異なります。リーダーシップは、フォロワー(部下・メンバー)が喜んで主体的に動くのに対し、マネジメントはある意味強制的に動かざるを得ない状況で動くのです。

実は1章で述べた以前のリーダー像にはこのマネジメントの要素も含めて捉えている方が多く、そのためにそういったリーダーにはなりたくないと思っている方も多くいました。

3.今求められるリーダーシップとは

では、今、どの様なリーダーシップが求められているのでしょうか。昔ながらの力強いリーダー像がピンとこない方の多くが共感する考え方の1つとして、サーバント・リーダーシップという考え方があります。

書籍「サーバントリーダーシップ入門」の中では
・まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである
・自分が達成すべきことや夢に対して強い使命感を持ち、それを実現するために自らの意識でサーバントに徹すること
・サーバント・リーダーが自分、または自分たちのミッションをしっかり持っていて、それにみんなが向かっている限りは支える
と定義されています。

そして、サーバント・リーダーが持つ特徴として10の特徴があげられています。
① 傾聴(Listening)
② 共感(Empathy)
③ 癒し(Healing)
④ 気づき(Awareness)
⑤ 説得(Persuasion)
⑥ 概念化(Conceptualization)
⑦ 先見力、予見力(Foresight)
⑧ 執事役(Stewardship)
⑨ 人々の成長に関わる(Commitment to the growth of people)
⑩ コミュニティづくり(Building community)

サーバント・リーダーを目指したいという人が多い一方で、企業の中でサーバーント・リーダーシップを発揮していく上での難しさとしては以下のような声を聞きます。

・自分はサーバント・リーダーを目指したいが上司や組織が従来の強いリーダーシップを求めているので理解が得られない
・そもそも、企業理念やビジョン、目標は上位層から提示されるので、自分自身でビジョン・ミッションを描くことはなく、与えられた目標に向かっていかないといけない
・部下の意見もしっかり聞いて、主体性を持って動いてもらえるようにしたいが、意見を引き出せない

このような悩みを解決していく上で、コーチングのスキルとあり方は様々な面で活かすことができます。

4.サーバント・リーダーシップとコーチング

サーバント・リーダーシップ発揮の大前提は、リーダー自身がビジョンやミッションを明確に持ち、その実現を本気で信じてワクワクしていることです。しかし、企業では会社のビジョンやミッションは決まっており、自身の業務の目標も上位層から提示されることがほとんどのため、リーダー自身がそのビジョンや目標を本気で実現したいと思いきれていないことが多くあります。

そのような時に、コーチングは重要な役割を果たします。コーチングでは、長期視点でありたい姿を考える機会が多々あります。まずは自分自身のビジョンを明確に持ち、その上で自社のビジョン・ミッションとの重なりを見つけられれば、自分がそのビジョンや目標の実現を本気で信じることができるようになり、結果としてその想いがメンバーにも伝わると思います。

また、サーバント・リーダーが持つ10の特徴はまさしくコーチに必要なあり方とスキルそのものです。クライアントと信頼関係を築き、何を言っても良い心理的安全性のある場をつくる。その上で傾聴し、新たな気づきを生み出し、お互いに成長していく。それらのプロセスを創り出すために、コーチ自身は常に自分自身を整え、新たなチャレンジを楽しむ存在であること。

つまり、コーチとしての在り方を体現し、スキルを磨くことがサーバント・リーダーシップの発揮につながっていくのです。

まとめ

私はリーダーシップと聞くと、映画「フォレスト・ガンプ」の1シーンを思い浮かべます。主人公が理由もなく走り出します。最初は一人で走っていたはずが、気がつけば後ろから多くの人がついてきていて、「平和のために走る人」として周囲に認識されている。

この例では主人公がビジョンを持っていたわけではないですが、人々の中で「平和」というビジョンに向かっている人と捉えられ、そのビジョンに共感した人が自分もそのビジョンを実現したいと主体的についてきているのです。

このように、メンバーが主体的に動けるようなリーダーシップの発揮を目指したいですし、そのためにコーチングは非常に有効だと思います。コーチングを単なるスキルと捉えず、リーダーとしてのあり方を学ぶ場としても取り入れてみてはいかがでしょうか。

記事の著者

吉岡 恵Megumi Yoshioka

  • WSCコークリエイター
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

システムエンジニアを経て、企業向け人材育成・組織開発に従事。
次世代経営者育成を中心に、様々なプロジェクトの企画・設計・運営実績を持つ。
現在は独立し、脳科学や心理学をベースとしたアプローチで組織開発・人材育成を行うとともに、研修講師としても活動している。