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PTAとチームコーチング

2022.07.01

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私はかつて、子供2人が保育園から高校まで、PTAの役員や委員を積極的に引き受けてきました。そして、他の委員たちや保護者や先生方、役所関係者や地元有力者を含め総勢100名を超えるステークホルダーを取りまとめてきました。
当初は独力で試行錯誤していましたが、2014年にチームコーチングを学んで以降、スムーズに運営できるようになりました。
そこで今回は、PTA在職中のチームコーチング活用(以下、PTAチームコーチングと表記)についてお伝えします。

1.PTAの役割と限界

PTA(Parent-Teacher Association)は、子供たちが楽しく安全に学ぶために支援する役割を担っています。
しかし小説やテレビドラマでは、PTAは子どもや先生と対立する「怖い存在」として描かれます。

実際、私が参加していたPTAも、
・全員参加が原則
・費用は強制徴収
・立候補者は僅かで、殆どの委員は割り当て制
の仕組みがあり、多くの保護者にとっては「イヤイヤやらされる」存在でした。

そして任期は子どもが在学中に限られ、メンバーは毎年春に入れ替わります。
予算も単年度で使い切る決まりです。
定例行事や役割は例年決まっていて、委員の裁量も限られています。

そのため私は
・作業を消化する雰囲気になる
・自分の担当領域以外の興味が湧かない
・チーム感を醸成するのが難しい
などの活動限界を常々感じていました。

そこで PTAチームコーチングです。新年度に選出された委員たちは、5月に開催される「PTA総会及び第一回委員会」以外は全員揃う機会がありません。

その時の顔合せで、私は
・チームとして一体感を持つこと
・ゴール設定を私たちで行うこと
・「私たちは選ばれし者」意識を醸成すること
を目指すことにしました。

2.PTAチームコーチング実施内容

まずミーティング前の入室時に、私は委員たち一人ひとりの目を見て笑顔で挨拶しました。シンプルですが非常に効果的です。
更には「お会いできてうれしいです」「今日は晴れてよかったですね」「雨の中わざわざ来てくれてありがとう」など『心の距離を近づける言葉』を伝えました。

顔合せ開始後のPTA活動の説明では、学習システム(視覚・聴覚・身体感覚)全てを使い委員たち全員に響く伝え方を行うように心がけます。

例えば、
・視覚:去年度の活動写真などでゴールイメージを共有する
・聴覚:時系列で4月から来年3月までの年間スケジュールや一連のタスクを提示する
・身体感覚:イキイキした経験談を話す
ことで、委員たちに参画意識が芽生え出します。

次に、「年間活動をやり終えた私たちは何を手に入れるか」について全員で話す機会を持ちます。少し隣の席の人と話してみましょうと伝えると、雑談に花が咲きます。
この時点で、委員たちは「受け身」から「体現者」に変化しだすのです。

そこで口滑らかになったころに以下の問いを一緒に考えます。
・子どもが笑顔になるにはどうしたらいいでしょうか?
・私たちが1年間楽しく活動するために何をすればいいですか?
・私たちが来年4月末に無事PTA任期満了した暁にはどこで宴会をしましょうか?
などを自由に話し、黒板も使いながら楽しい未来をイメージします。

その後、タスク(担当行事・定例作業)やスケジュールも共有することで、実行についてのプロセスも「私たち」で共に創ります。フラットな関係性での役割分担です。

理想目標、達成目標、行動目標の共創です。

最後は全員の拍手と共に「がんばりましょう!」とエールを送り合うことで、私たちはチームになれたのでした。

3.PTAチームコーチングの効果と変容

PTAチームコーチングの成果として
①「自分たちは選ばれた存在である」「自分たちはできる」ということで自己肯定感と自己効力感が高まる
②「バラバラの他人」から「私たち仲間」になれる
③期限(1年)を共有しタスクを見える化することで「何とかできそう」と思えるようになり、気持ちが軽くなる
④上位下達ではなく一緒に考えることができるというフラットな関係性を築ける
の4つが挙げられます。

活動内容も「例年通り」から「新しいことへの挑戦」にシフトしました。
実際、次年度からは委員への立候補が増加しました。

4.コミュニティやファミリーにおけるチームコーチングの活用

PTAの経験から、今後、地域コミュニティや家族、親戚のような小規模な組織において、チームコーチングは効果を出せるのではないかと考えます。
「企業のように成果優先で人選する」ことが難しい、「今のメンバーでなんとかしないといけない」活動においても、チームコーチングで関係性を築き、場をつくり、できることを最大化して相乗効果をもたらすことが期待できます。

まとめ

人生100年時代です。仕事時間はもちろん、仕事以外の時間も長くなります。
そして家族や地域コミュニティでは「自分と同じバスに乗る人を選べない」ことも多いでしょう。
序列や階層によらないフラットな関係性に基づくチームが求められます。
その時にチームコーチングはますます効果を発揮することになるでしょう。

記事の著者

矢頭 聖子Kiyoko Yatoh

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

コーチ&ファイナンシャルプランナー。
元金融系システムエンジニア。2005年に独立。
現在は経営者や管理職、就職・転職・起業志望者を対象にコーチングとファイナンシャルプランナー両方のスキルを活かした個別相談やセミナーを実施。
また中高生やその保護者へのキャリア教育、金銭教育にも取り組んでいる。