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インクルーシブ・アプローチで進化する
チームビルディング―声を活かす設計とAI活用の実践

2026.04.01

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チームビルディングにおいて、「全員を同じ方向に揃えること」が正解とは限りません。
むしろ、役割や専門性、背景の異なるメンバーが集まる組織では、その「違い」を前提とした関わりが求められます。
私が所属する組織でも、部門や文化の違いに加え、アクティビティへの関わり方やAI活用におけるスキルの差など、さまざまな「違い」が存在していました。
こうした状況の中で着目したのが、「違いをなくす」のではなく、「違いを前提に関わりを設計する」というアプローチです。
本コラムでは、インクルーシブ・アプローチの視点から、チームの声を活かす設計とAI活用をどのように組み合わせ、チームビルディングを進化させてきたのか、その実践について紹介します。

1.チームビルディングの課題

チームビルディングにおいて、「全員を同じ方向に揃えること」が正解とは限りません。
むしろ、役割や専門性、そして背景の異なるメンバーが集まる組織においては、その「違い」があること自体が前提になります。
私が所属する組織は、ガバナンス、リスクコントロール、開発事業、そしてレストラン予約サービスといった異なる機能を持つ複数部門で構成されており、さらにM&Aを経た背景から、文化や価値観の違いも内包しています。

このような環境では、同じ言葉でも解釈が異なり、意思決定の基準や優先順位にズレが生じやすくなります。
表面的には一つのチームであっても、実態としては分断が生まれている。そのような状態に陥ることも少なくありません。
また、チームビルディングの一環として実施するアクティビティにおいても、関わり方には差が生まれます。
積極的に発言するメンバーがいる一方で、発言の機会を持ちにくいメンバーも存在し、「同じ場にいるが関与度は異なる」という状況が見受けられました。

さらに、今年からChatGPTの業務利用が解禁されたことで、新たな課題も顕在化しています。
AIを使いこなせる人と、使い方がわからない人との間に、スキルや活用度の差が生じ、組織内に新たな“見えないギャップ”が生まれていました。
このように、チーム内には複数の「違い」が存在し、それが関係性や成果に影響を与えている状況でした。

2.インクルーシブ・アプローチとニーズの可視化

こうした状況の中で私が着目したのが、「違いをなくす」のではなく、「違いを前提に関わりを設計する」というインクルーシブ・アプローチです。
重要なのは、全員を同じ状態に揃えることではなく、それぞれが意味を持って関われる状態をつくることです。
そのためには、まず一人ひとりがどのようなニーズや期待を持っているのかを把握する必要があります。

そこで、職場や働く環境に対するニーズを把握するためのアンケートを実施しました。
ここで意識したのは、「表面的な要望」を集めることではありません。
メンバーが日々感じていることや、まだ言語化されていない思いに光を当てることでした。
例えば、
・どのような関係性があると働きやすいと感じるか
・チームに対してどのような期待を持っているか
・現在の環境で改善したい点は何か
といった問いを通じて、個々の価値観や背景にアプローチしました。

その結果、「他部門のことをもっと知りたい」「気軽に話せる関係性をつくりたい」「安心して意見を言える場がほしい」といった、関係性に関するニーズが多く見られました。
こうした声は、日常業務の中では見えにくいものですが、チームの土台を支える重要な要素です。

3.実践:声を活かす設計とAI活用

アンケートで得られたニーズをもとに、取り組みの設計そのものを見直しました。
単に多くの要望に応えようとするのではなく、ニーズをサブトピックとして整理し、それぞれに対応する形でトレーニングやアクティビティを設計しました。
また、AI活用においても同様に、理解度や業務内容に応じた複数のアプローチを用意しました。
Tipsの配信、勉強会、実践会といった形で段階的な学びの機会を設け、実際の業務に即した活用方法を具体的に示しています。

例えば、チーム・アクティビティ「チームランチ会&お花見ウォーク」では、構成の検討から案内メールの作成までChatGPTを活用して行い、そのプロンプトとプロセスを共有しました。
その結果、「具体的な使い方がわかり、使ってみようと思った」「構成から一緒に考えられることに驚いた」といった反応が見られ、行動変容のきっかけにつながりました。

さらに、チームビルディングの一環として、グループ対抗のクイズ形式によるビンゴゲームも実施しています。
このゲームは、職場環境改善のタスクフォースメンバーでオリジナルに設計したものであり、クロスチーム内のメンバー全員が最低一度は発言する構造としています。
各事業部の業務に関する問いを取り入れることで、それぞれの専門性が自然と共有され、対話を通じて相互理解が深まる仕組みです。
単に発言を促すのではなく、「発言せざるを得ない構造」を設計することで、関与の偏りを解消することを目指しました。

まとめ

これらの取り組みを通じて、チームには少しずつ変化が生まれています。
これまで発言が少なかったメンバーが意見を共有するようになったり、部門を越えて理解しようとする姿勢が見られるようになったりと、関係性の質が変わり始めています。
さらに、これまで表に出にくかった意見や、いわゆるネガティブと捉えられがちな発言も、徐々に共有されるようになってきています。

従来であれば、こうした意見は場の空気を考慮して控えられることも少なくありませんでした。
しかし現在は、課題や違和感を率直に言葉にできる場が生まれつつあります。
これは単なる発言量の増加ではなく、心理的な安全性が高まり、チームとして本質的な対話が可能になってきている兆しだと感じています。

ネガティブな意見が出ること自体が問題なのではなく、それを扱える関係性があるかどうかが重要です。
むしろ、違和感や課題が言語化されることで、チームとして向き合うべきテーマが明確になり、より健全な意思決定につながっていきます。
AI活用においても、「使ってみようと思った」という声が増え、行動のハードルが下がってきていることを実感しています。
こうした変化から感じているのは、チームビルディングもAI活用も、本質は同じであるということです。
それは、「違いをどう扱うか」という問いに向き合うことです。

インクルーシブとは、多様性を受け入れることではなく、違いを前提に“関わりを設計すること”なのかもしれません。
あなたのチームでは、それぞれの声がどのように扱われていますか。
そして、その声はチームの力として活かされているでしょうか。

記事の著者

藤生 あゆみAyumi Fujiu

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

美大を卒業しアパレル業界に就職後、渡英。そこで対話を通して学ぶアプローチに理想を見出す。日本に導入するため帰国し、日本語教員になる。30歳で教育ディレクターに就任し、対話型教育モデルをつくるため教員養成・教材開発に情熱を注ぐ。10年ディレクターを務める間にコーチングに出会い、自校に導入。2003年よりコーチとしての活動も開始。異文化コミュニケーションへの見識を活かしユニバーサルチームコーチングを実践中。