脳の使い方を変えるWeメソッド®WSC ホールシステムコーチング®Whole System Coaching

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チームコーチングとグループコーチングの違い

2023.08.01

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ICFジャパン主催のコーチング・コンバージ2023の初日6月16日(金)に、ビデオ登壇したICF本部 CEOマグダ氏(Magdalena Nowicka Mook)。世界200カ国以上のコーチングリサーチ結果のなかで、日本のコーチは50代-60代が一番多いという結果です。この結果は数年続いています。Z世代のコーチも増えてきたとはいえ、50-60代のコーチが業界を牽引しています。1997年に日本にコーチングが導入されて、26年目。20年以上経験があるコーチたち(同期仲間)が第一線で元気に活躍しているのは、ある意味日本社会の構造だなと感じています。

そして、チームコーチングのニーズは年々、高まってきているとのことでした。
世界 165 ヶ国、約 32 万人の会員を擁するSHRM(人材 マネジメント協会)の年次カンファレンス(アメリカ・ラスベガス開催)に2023年6月に参加した人材コンサルタント 松下直子氏のお話をお聞きすると、300をこえるセッションテーマをテキストマイニングすると、「Equity」 (公平性)と「Workplace」(職場)だったとのことです。

リーダーシップ/組織開発のテーマが多く、世界的にも組織において、リーダーシップ・組織開発テーマは、恒常的にニーズが高いようです。
そのようなニーズを反映しているかのように、近年、チームコーチングに注目が集まっています。
今回はチームコーチングとグループコーチングの違いについて見ていきましょう

1.コーチングの本質

まず、コーチングの本質について、です。
「Coach the Person, Not the Problem」
「問題ではなく、人をコーチする」
– Marcia Reynolds/マーシャ・レイノルズ-

これは、世界的コーチの第一人者 マーシャ・レイノルズ氏 ,MCCの新書「変革コーチング」の原書の
本のタイトルです。

ホールシステムコーチング®︎(WSC)では、コーチウェイで「Holistic Approach/全体的にアプローチする」を伝えています。
「コト/問題ではなく、人を聴く」
「コト」だけではなく、「人」へのアプローチをします。
森も木も枝葉も見て、聴いて、感じて対話をしていきます。

マーシャ・レイノルズ氏が新書「変革的コーチング」の原書のタイトルは、「問題ではなく、人をコーチする」は、コーチングの本質を端的にあらわしているなと感じています。

コーチングについては、コラム「コーチングとは」やコラム「ホールシステムコーチング®︎」のカテゴリーに多数ありますので、詳しくは、そちらをご覧ください。

2.チームについて

「チームコーチングとグループコーチングの違いは何か?」を考える前に、
・チームとは何か?
・グループとは何か?
を自分なりに言語化をしてみましょう。

2023年3月WBC 侍ジャパンの活躍は、世界一を目標にチームになっていくチームプロセス、リーダーシップ、チームダイナミクス、DEIB(Diversity 多様、Equity 公平、 Inclusion包括、Justice公正、Belonging帰属)の要素など満載で、メタファーとしてとてもわかりやすいので、話題にする方も多いことでしょう。

日本代表メンバーは超一流で、能力もマインドセットも卓越しているので、一般には参考にならないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、チームづくりについては取り入れたい点がたくさんあります。
現在、チームはより多様で解決したい課題はより複雑になっています。
チームやプロジェクト運営に、「侍ジャパンの何を取り入れたいですか?」

3.チームコーチングとグループコーチングの違い

日本にチームコーチングの考え方がひろまったきっかけの1つは、ピーター・ホーキンズ氏の著書「チームコーチング」が2012年4月に出版されたことがきっかけです。それまでは、日本のコーチングは、1対1のコーチングかグループコーチングしか存在しませんでした。

今から11年前2012年に、コーチ仲間がピーター・ホーキンズ氏の「チームコーチング」を紹介してくれた時は、「これからはチームコーチングだ」と教えてくれた時は、「チームコーチング?」という言葉の新鮮さを今も覚えています。「グループコーチングと何が違うんだろう?」という問いとともに、何かわからないのですが、新しい期待感と可能性を感じていました。

当時、チームダイナミクスを起こして組織変革を目的とした集団へのコーチングは、一人一人の話を聴いて対話するだけでは(対話は価値があります)、対立を超えてく変容していくには限界があると感じていました。
だから、チームコーチングに可能性を感じたのでしょう。

グループコーチングとは、グループという状況内での個人コーチングのことであり、その状況において、グループメンバーが一人ずつ交代で「重要なクライアント」となり、それ以外のメンバーたちは「その人物のためのコーチングのリソースの一部」となる。 (チームコーチング P102より引用)

WSCのチームコーチングの定義は、
チームを一つのシステム(一生命体・一人格・一つの脳)として捉え、チームをコーチングします。チームのビジョンを明確にし、共有したうえで、共通のゴールを達成するために行うコーチングです。
そして、チームを一つの脳と捉えて、システム全体にアプローチし、組織もホールブレインとして機能するコーチングをします。
 
コーチングに限らず、個別対応は重要です。

しかし、組織・チームの中では、対立する個人、個人を個別にコーチングしてもうまくいきません。
なかなか思うように、成果が上がらないのが現状です。
 
成果を出して、新しい文化を共創していくには、個人の価値観や対立を越え、関係性と文化などのシステム全体を同時にコーチしていく必要があります。
 
リース・ワーグマン氏(ハーバード大学心理学部客員研究員)の調査によると、調査から得られた意外な事実は、メンバー全員が個人能力を向上させるための個人コーチングを受けても、チームの力はあまり向上しないということである。確かに、個人コーチングは重役たちそれぞれがより良いリーダーになるためには役に立つ。しかし、それは必ずしもチームを改善するわけではない。チーム開発は、個人がより良いチームプレイヤーになれば達成できるものではなく、全く別の能力の向上が求められるのである」
ということです。

ICF のチームコーチングとは、「チームが共通の目的と共有されたゴールに 到達するために、共創的で内省的なプロセスを通して、チームの能力と可能性を最大化させるように、ダイナミクスと関係性の上で成り立つチームとしてのパートナー関係を築くことです。」と定義しています
which ICF defines as partnering in a co-creative and reflective process with a team on its dynamics and relationships in a way that inspires them to maximize their abilities and potential in order to reach their common purpose and shared goals.

チームコーチングの文脈でのクライアントは、
複数の個人で構成される1つの実体としてのチームです。

チームコーチングとグループコーチングの違いについて、自分の中で何が明らかになりましたか?
チームコーチングの事例などは別の機会にお伝えしたいと考えています。

まとめ

チームコーチングのニーズが一般に高まり、浸透するのに、約10年です。何か新しいことを始めて、世界的に認知されるには10年位はかかったということでしょうか?
ICFでは、コーチのアドバンス資格として、チームコーチング上級認定ACTC(Advanced Certification in Team Coaching)を2023年から実施しています。チームコーチングのニーズが高まる中、現在、チームはより多様で解決したい課題はより複雑になっています。チームコーチングを提供するチームコーチの能力水準を世界基準で定めました。
組織・チームに1対1のコーチングだけでなく、チームコーチングを導入してみるのも組織開発や組織変革に役立つことでしょう。

記事の著者

生嶋 幸子Sachiko Ikushima

  • ホールシステムコーチング®共同開発者
  • 国際コーチング連盟マスター認定コーチ(MCC)(関西女性初)
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

株式会社コーチ・アイエヌジー 代表取締役
自社開発したホールシステムコーチング®が2014年国際コーチング連盟(ICF:本部アメリカ)からコーチ・トレーニング・プログラム(ACTP)として日本で3社目に正式に認定される。2000年よりコーチとして活動。エグゼクティブコーチング、企業向けプロジェクトコーチング、コーチ養成スクールなどを中心に人と組織の変革を行う。
2017年国際コーチング連盟グローバル・カンファレンス(ワシントンD.C)でアジア人唯一のスピーカーを務める。