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採用面接官が活かせるコーチング

2023.04.01

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2022年度上半期の中途採用において、人員を確保できた企業は39.3%、確保できなかった企業は58.7%、比較可能な2013年度以来で、人員を確保できなかった企業の割合が最も高くなったようです。
(Works flash中途採用実態調査2023年1月23日より.リクルートワークス研究所)

人員確保が難しい今の時代、企業の顔として応募者と面接する採用面接官の役割や責任が大きくなると感じています。
コーチングを活かしたコミュニケーションを採用面接に応用することで、応募者に安心感を与え、自社への好印象と強い動機付けをすることが可能になると考えます。
実際に私自身がコーチングを活かし採用面接官を務めた経験をご紹介します。

1.ICF(国際コーチング連盟)のコア・バリューと
採用面接官の心構え

応募者の理想的な採用面接官とはどんな人でしょうか?
おそらく、応募者の価値観や信念に耳を傾け、その価値を理解してくれる。一方で、面接官自身の言葉でその会社のビジョンや信念・価値観、仕事の経験を話せる面接官ではないでしょうか。

一言でいうと「人として関わる」です。採用面接官が応募者と「人として関わる」ことで、そのような関係性が構築できる基盤が社内風土にあると応募者に感じてもらえることも重要でしょう。

「人として関わる」ことはコーチの心構えと似ていると私は考えています。
だからこそ、私が採用面接官として心構えの参考としたのは「ICFのコア・バリュー」(中核となる価値観)でした。以下、ICFのコア・バリューの紹介です。

【ICFのコア・バリュー】
・プロフェッショナリズム(専門性)
私たちは、責任、尊敬、誠実、能力、卓越を包含するコーチングマインドと
プロフェッショナルとしての品質を約束します。

・コラボレーション(協働)
私たちは、社会とのつながりを深めコミュニティを形成することを約束します。

・ヒューマニティ(人間性)
私たちは、人道的かつ親切で思いやりがあり、他者を尊重することを約束します。

・エクイティ(公平性)
私たちは、他者のニーズを探索し理解するために、コーチングマインドを用いることを約束します。
そして、すべての人のために価値をつくり出す常に公平なプロセスの実践を可能にします。
(ICFジャパン ICFのコア・バリュー 日本語訳より抜粋)

ICFのコア・バリューはコーチとクライアントのパートナー関係を築くため、今の時代にあったグローバルな価値観であり、採用面接官として応募者と良い関係性つくりに必要な価値観が含まれていると考えます。
採用面接官として応募者の方と面接時には、仕事に対してプロフェッショナルであり、応募者と協働し、人間性を重視し、応募者と採用面接官である私は公平であるように務めました。

2.信頼関係(ラポール)を築く

ラポールとはお互いの間につくられた信頼関係のことです。ラポールが築かれ、お互いに安心感を抱けば、本音(=本当のこと)を話しやすくなります。
応募者は採用面接官を前に緊張している場合が多いでしょう。本音を打ち明けてもらうには話せる雰囲気づくりをする必要があります。
私は、コーチングで学んだ4つのスキルを意識し、信頼関係(ラポール)を築くように心がけています。

① ペーシング
ペーシングとは、相手に合わせていくことで、親近感や安心感、信頼関係を築くための技法です。
人は、自分と共通点を持つ人に親近感を抱きやすいという性質があります。
面接の前に、履歴書や職務経歴書から応募者の方と私との共通点を見つけるように心がけています。
なかでも居住地や出身大学・趣味特技は、共通の話題として話を切り出しやすく、応募者の方にとっても、自分の身近なテーマを話題にすることで緊張感が少なく話を広げやすいと考えました。

話題の共通点だけでなく、声の調子、声の高低、声の大小、話すリズム、スピード、
相手の考え方、価値観、明るさ、静けさ、熱意、感情、呼吸も合わせるように心がけています。

② 相づち
言葉尻に注目し、うなずく。「なるほど」、「そうですね」、「興味深いですね」
などニュートラルな相槌を意識し、相手の意見を受け止める(受け入れる)

③ バックトラッキング
日本語でいう『オウム返し』です。
(1)相手の話した『事実』を反復する。
(2)相手の話した『感情』を反復する。
(3)適宜、相手の話を要約して返す。

④ ミラーリング
相手の身振りや動作を合わせる方法。姿勢、座り方、身振り、手振り、態度、表情など
相手の身振りや動作を合わせることで、無意識レベルに親近感を感じます。
そのことによって一体感が生まれます。

面接開始から5分ほどは、この4つのスキルを意識し、応募者の方と信頼関係(ラポール)を築くことに集中しました。そうすることで、面接の場ではコミュニケーションをとりやすい雰囲気になりました。

3.全脳システムを活用した質問をする

「全脳システム」とは、相手が使う言葉をキーワードに、相手の脳の使い方(脳のクセ)や使っている脳の領域を把握します。脳の使い方(脳のクセ)の違いにより、
思考特性(物事の捉え方や考え方)が人それぞれ異なり、あらわれる言動も異なります。

応募者の全脳システムを聴き分けるため、応募者の使っている好きな言葉や言動(使ってる言葉や行動)、質問に対する答えでL1、L2、R1、R2、の4領域(全脳システム)のどの領域の傾向が強いか聴きわけます。

全脳コーチング(簡易版)

【各領域の好きな言葉やよく使う言葉(簡易版)】
好きな言葉やよく使う言葉をチェックしてみましょう
(ホールシステムコーチング®︎全脳コーチングより一部抜粋)

全脳システムを聴き分けることで応募者の人となりを知る一つの手がかりになると考えます。そして、応募者の4象限に合わせた伝え方をすることで、より会社や業務の内容が応募者へ伝わるでしょう。

【4領域を意識した質問】
L1「あなたの強みを活かすと、会社が得る成果はなんですか?」
R1「5年後、ワクワクする働き方はどんなイメージですか?」
L2「どの様に仕事をしていきたいですか?」
R2「あなたの強みを活かすために誰の協力が必要ですか?」

面接の時間は1時間程度です。全脳システムを意識することで、応募者と面接官が、少しでもわかり合える時間になるよう、面接の現場で取り入れています。

まとめ

採用面接官を担当するにあたり、セミナーを受けたり、書籍を読んだりしましたが、私が一番参考になったのは今まで学んできたコーチングでした。

応募者の方と良い関係性をつくり、お互い本音で話をし、未来に向けて話を進めていく。そして、全脳コーチングを理解していれば、会話や動作で応募者の思考特性(物事の捉え方や考え方)も理解できます。

面接官がコーチングを学び、「人として関わる」ことで、応募者とより良い関係をつくり、応募者に選ばれる会社になっていくと私は自分の経験を通して感じています。
多くの面接を担当する方にコーチングを学んで欲しい。私はそう考えています。

記事の著者

山本 貴史Takashi Yamamoto

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ