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チームは一つの生命体!ティール組織

2020.10.01

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今も昔も「組織設計」や「マネジメント」はビジネスにおける注目テーマとして扱われ続けてきています。
組織開発は、古今東西を問わず、企業にとっては重要な課題で、今までもさまざまな組織論が生まれてきましたが、日本では2018年より大きな注目を集めているのが「ティール組織」です。
ティール組織とは、階層構造や管理マネジメントの仕組みが存在しない、
社員一人ひとりが裁量権を持って行動する組織形態で、この組織形成にはコーチングの要素が重要に関わることから取り上げることにしました。

1.「ティール組織」とは?

ティール組織という概念は、コーチやアドバイザーとして世界各国で活動しているフレデリック・ラルー氏が2014年に執筆した原著『Reinventing Organizations』によって紹介され、新しいマネジメント手法として注目されるようになりました。
ティールは、青緑色という意味の英単語です。その著書で提唱されたティール組織とは、「目的に向かって、組織の全メンバーがそれぞれ自己決定を行う自律的組織」のことを指します。

ティール組織では、上司が部下の管理を行わないなど、従来の組織形態では考えられなかった特徴をもっています。
ラルー氏は、組織の進化過程を5つに分類した上で、それぞれのモデルを色分けしました。その中で、最も新しい組織モデルをティール(青緑色)で表しています。ラルー氏の考え方の特徴的な点としては「旧来のマネジメント手法は成果が上がっているが、実は組織に悪影響を与える可能性を含んでいる」という指摘を行った点が挙げられます。

このように、旧来型組織とは一線を画する組織のあり方として提示されたのが「ティール組織」で、意思決定に関する権限や責任のほぼすべてを社員個人に譲渡して、組織や人材に革新的変化を起こす「次世代型組織モデル」として世界中から注目されています。

2.「ティール組織」が求められる背景

ラルー氏がティール組織を提唱した目的は、大きな副作用をはらむ従来の「マネジメント」の方法論をくつがえすことにあります。
その理論によると、組織は多くの場合、従来の価値観を大きく変えるような革命的変化に出会ってパラダイムシフトを起こし、意識の発達段階を次のステージへと進めます。組織のステージは、経営者やトップマネジメント層の意識の発達段階に比例して、進化していくとされています。

著書に挙げられているティール組織に至るまでの組織フェーズは、次の5段階に分けられています。

<<ティール組織への5つの段階の概要>>
・Red(レッド)組織:圧倒的な力を持つトップによる恐怖支配
レッド組織のメタファーは「オオカミの群れ」。特定の個人の力で支配的にマネジメントするという特徴を持ち、力に従属することで構成員は安心を得ることができます。この組織は短期的な目線で動いており、組織としてどのように生き抜くかのみに焦点が当たっている状態で、個人の力に依存するため、再現性のない組織形態とも言えます。

・Amber(アンバー/琥珀)組織:役割を厳格に全うする軍隊的な上意下達のヒエラルキー組織
琥珀組織のメタファーは「軍隊」。上意下達で厳格かつ社会的な階級に基づくヒエラルキーによって情報管理が行われ、指示命令系統が明確な組織です。厳格に役割を全うすることが求められる点が特徴的であり、レッド組織よりも長期的な目線を持った組織に進化しています。
ヒエラルキーに基づく役割分担によって、特定の個人への依存度を減少させることが可能になり、多人数の統率も実現できます。構成員は安定的に継続できる組織を目指していますが、琥珀組織は今の環境が不変であることが前提であるため、状況変化に柔軟に対応できず、変化や競争よりもヒエラルキーが優先されるという課題をはらんでいます。

・Orange(オレンジ)組織:ヒエラルキーは存在するが、成果を出せば昇進可能な達成型組織
オレンジ組織は「機械(メカニック)」。階層構造によるヒエラルキーが存在しながらも、成果を上げた構成員は評価を受け、出世できるという組織です。ヒエラルキー内の流動性が付与されているため、時代に応じた能力や才能を持っている個人が力を発揮しやすく、変化や競争も歓迎され、琥珀組織に比べてもイノベーションが起きやすくなっています。
しかしながら、数値管理によるマネジメントも徹底されているため、常に生存のための競争を強いられることになります。そして、機械のように絶えず働き続けることが助長され、人間らしさの喪失につながっていきます。現代の企業マネジメントの大半は、オレンジ組織に集約されると考えられます。その結果、人間としての幸せは何かという原点回帰が生じて、働き方改革という動きへとつながっていきます。

・Green(グリーン)組織:主体性が発揮しやすく多様性が認められ、成果より人間関係を重視したボトムアップ型の組織
グリーン組織は「家族」。オレンジ組織のように社長や従業員といったヒエラルキーは残すものの、その人らしさを表現でき、主体性を発揮しやすく個人の多様性が尊重されやすい組織となっています。単に目標を達成することだけが「良し」とされるのではなく、組織に属する個人に初めて焦点が当てられるようになります。
ただし、社長の権力がどのように組織内に分配されるかといったルールがないため、構成員間での合意形成に時間を要してしまう場合があります。また、合意形成が取れない場合は、最終的に社長が意思決定権を持つことになります。このような制約はあるものの、多様性が尊重されるため、構成員にとって風通しのよい組織ではあります。

・Teal(ティール/青緑)組織: 組織を1つの生命体としてとらえ、個人も組織も進化し続ける進化組織
ティール組織は「生命体」。組織は社長や株主だけのものではなく、組織に関わるすべての人のものと捉えて、「組織の目的」を実現するために共鳴しながら行動をとる組織のことです。ティール組織には、マネージャーやリーダーといった役割が存在せず、上司や部下といった概念もありません。
社長や管理職からの指示命令系統はなく、構成員全体が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら目的実現のために組織運営を行っていきます。そして、ともに働く構成員の思考や行動がパラダイムシフトを起こすきっかけとなり、さらなる組織の進化につながっていきます。

3.「チームが一つの生命体」になる重要な要素

現在、ティール組織であるとされる企業は複数ありますが、登場したばかりの組織形態であるため、ティール組織を確立できる明確な手法は、まだ存在しません。とはいえ、ティール組織の企業には、いくつかの共通項が存在します。中でも、ラルー氏が重視する考え方が、次の3つです。
 
3-1. エボリューショナリーパーパス(存在目的)
エボリューショナリーパーパスは、「存在目的」と訳されています。 
従来型の組織形態では、固定化された目標を追求することが、メンバーには求められていました。しかし、ティール組織では、環境の変化などに応じて、組織の目的も常に進化すると考えられています。
ティール組織のリーダーは、常に“耳を澄ませ”、「何のために?」と、組織の存在目的を確認し続けることが必要です。その結果、組織が陳腐化していくことを防ぎ、生命体のように組織自身を変化させ続けることができます。

3-2. セルフマネジメント(自主経営管理)
ティール組織は、ヒエラルキーに基づく指示系統を持ちません。そのため、主体性を持つ各メンバーが自身の裁量で意思決定を行うことができます。意思決定を社員全員が行うために、会社の情報は基本的に開示されており、透明性が保たれている点が特徴です。
この意思決定を適切に行うためには、他者の助言を得られるシステムが確立されています。しかし、裁量権はあくまでメンバー個人にあり、その判断は尊重されることが基本です。
組織をより良くするためのアイデアがあれば、各々で実験し、その過程で生まれるメンバー間の協力により賛同者を集めることで、大きなプロジェクトにすることができます。上司から一方的に指示されることはありません。
セルフマネジメントの考え方では、社員に大きな裁量を与えるため、経営者は社員を信用することが不可欠です。互いに信頼感を持って働くことで、それぞれが自律的に思考し、イノベーションが生まれやすい環境となります。
 
3-3. ホールネス(全体性)
ティール組織では、各メンバーが自分の力を最大限に発揮できる環境を作ることが欠かせません。そのため、ティール組織を目指す企業は、メンバーがありのままの自分自身を出せる場所であることが必須です。
自社の利益につながる側面でのみ社員を見ていると、社員も会社とプライベートの顔を使い分けることがほとんどで、そのような状態では、メンバーが持っている本来の力を発揮することはできません。
ティール組織は、個人の多様性を最大限に尊重することで、心理的な安全性を確保し、安心して個性を最大限に発揮できる環境をつくることにより、自分と組織が持つ目的のために最大限の力を発揮することが可能になります。
ティール組織を目指す企業の中には、自分らしくいられる環境をつくるために、勤務中の社内に子どもやペットを連れて出社できるところもあります。

まとめ

最後に、「ティール組織」の形成過程であることが認識できるので、私の職場(グローバル企業)の例を一部ご紹介します。
まず、私の職場ではミーティングには同じオフィス内であってもオンライン設定をすることがマナーです。10年前より在宅勤務が奨励されているため、いつでもどこからでも参加できるように設定するのが基本になっています。在宅100%のメンバーもいたり、時差やフレックスによって食事中に参加したり子どもや犬が登場したりすることは珍しくありません。
また、何か新しいことを企画・推進する際には、アクセスできる規定・法令、相談できるエキスパートや関係部署の担当者にアドバイスをもらい、形にしていくことが可能です。事前承認を取り、それぞれが個人事業主として仕事をしている認識で、進捗報告を上司にしつつ業務をしています。
また、各自は自身の持つ特殊スキルやタレント(才能)を発揮して会社に貢献することも可能になっています。
コミュニケーションの研究をしていた財務部のメンバーが社内セミナー講師として一定期間プログラム提供で各国を回っています。そして、私自身もマーケティング部に所属しつつ、専任業務とは別に、他部署やそこのメンバーと社内契約を交わしてコーチングセッションやセミナーを行うことができ、リーダーシップのアピール対象として承認されています。

私の職場は、働きがい、働き方や文化の多様性、社員のニーズ、社会や環境の変化に対応しつつ最善の形に変化していく中で「ティール組織」に進化してきたことが必然なように思えます。
今回、「ティール組織」についてまとめたことにより、その組織を構成する人のあり方と環境を整える重要性を強く感じました。
一人一人がCOACH WAY( Creativity創造力、Openness自己開示、Accountability主体的実行力、Connected自分自身、相手、場とつながる、Holistic Approach全体的にアプローチする)を念頭に当たり前のように行動することが、「ティール組織」を実現するカギだと認識しています。
メンバーそれぞれが存在意義を感じながら、生き生きとした笑顔で活気にあふれて仕事をし、成長進化していけることは多くの人の願いだと思います。
私たちと一緒にCOACH WAYが当たり前になる社会を創造していきませんか。

記事の著者

藤生 あゆみAyumi Fujiu

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

美大を卒業しアパレル業界に就職後、渡英。そこで対話を通して学ぶアプローチに理想を見出す。日本に導入するため帰国し、日本語教員になる。30歳で教育ディレクターに就任し、対話型教育モデルをつくるため教員養成・教材開発に情熱を注ぐ。10年ディレクターを務める間にコーチングに出会い、自校に導入。2003年よりコーチとしての活動も開始。異文化コミュニケーションへの見識を活かしユニバーサルチームコーチングを実践中。