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バイアスを自覚して耳を傾ける。
DEIBへの取り組みでの気づきから学ぶ

2024.01.01

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今日、社会や企業では全ての人が平等に扱われ、チャンスを得られるようにするため、DEIJB(多様、公平、包括、公正、帰属)への取り組みが推進されています。DEIB(DEIJB)を推進する理由は多岐にわたります。
まず、社会的に、公正で公平な機会を確保するためには、あらゆる人が平等に扱われることが不可欠です。さらに、多様な背景や視点を尊重することで、豊かなアイデアとイノベーションが生まれ、組織や社会が成長することが期待されます。また、包括的な環境を築くことで、個々の力を最大限に発揮できる場所を提供し、従業員やメンバーの自己実現がより可能になります。
そして、最終的には、DEIBの推進によって、組織や社会がより公平で包括的な場所になることを目指しています。

私の職場でもDEIJB(多様、公平、包括、公正、帰属/ビジビリティ)に対する取り組みを様々な方法で行っていますが、私も4年前から職場でその取り組みの一つである女性の働く環境改善のコミュニティに参加し、活動を行っています。
そして、今回、活動を行う中で様々な気づきや学びもあり、来年度よりコーチとして関わる機会を得たので、あらためてDEIBとその推進について深く理解しまとめておきたいと考えました。

1.DEIBとその取組みとは?

DEIB(DEIJB)とは、多様(Diversity)、公平(Equity)、包括(Inclusion)、および公平(Justice)、そして帰属(Belonging)を指す言葉です。これらの概念は、社会や職場において、異なる背景や特性を持つ人々が平等に尊重され、公平な機会を得られることを目指しています。
つまり、個々の違いを認め、尊重し、それぞれが自分らしく活躍できる環境をつくることが重要な考え方です。
次にDEIJB一つずつの概念の下で、取り組まれる具体的な例を上げて説明します。

多様 (Diversity):これは、異なる人々の背景や特性が多様であることを指します。例えば、企業の多様性は、異なる国や文化出身者、性別、年齢、障がいの有無など多くの要素が含まれます。例えば、ある企業が異なる文化出身者や性別、年齢層などからなるチームを組織し、それぞれの視点やアイデアを取り入れることで、多様性を実践しています。

公平 (Equity):全ての人々が平等な機会を得られることを指します。例えば、ある学校が経済的に不利な状況にある生徒に対して追加の支援を提供することで、教育の公平性を確保しています。

包括 (Inclusion):異なる背景や特性を持つ人々が含まれ、尊重される環境を指します。例えば、あるコミュニティセンターが障がいを持つ人々も含め、全てのメンバーが参加できるイベントを開催することで、包括性を実現しています。

公正(Justice):公正さや平等さを追求することを指します。例えば、ある組織が給与格差を縮小し、男女間や人種間の不平等を是正するために、公正な給与制度を導入しています。

帰属(Belonging):個々の人が自分を受け入れられ、属すると感じることを指します。例えば、ある団体が異なる背景を持つメンバーの声や貢献を称賛し、尊重することで、透明性を高めています。
これらの要素はお互いに関連しており、組織や社会全体で実践されることで、より公正で包括的な環境を実現する手助けとなります。

2.DEIB推進の障害と課題/バイアスとプレジャディス

DEIBを推進する際に直面する障害や課題はさまざまです。以下に、その一例をいくつか挙げます。

1.文化や伝統の抵抗:一部の組織では、古い文化や伝統、確立された慣行に対する抵抗がDEIBの推進を妨げることがあります。特定の考え方や行動様式が長く根付いている場合、それを変えようとする試みに反発が起こることがあります。

2.リソースや予算の不足:DEIBに取り組むためのリソースや予算が十分に割り当てられていないことが課題になることがあります。多様性を推進するためのトレーニングや教育プログラム、多様な人材を採用するためのリクルーティング活動などに必要な資源が不足している場合、効果的な取り組みが難しくなることがあります。

3.リーダーシップの不足:DEIBを推進するためには、組織のリーダーシップ層が積極的に関与し、そのビジョンをサポートすることが重要です。しかし、リーダーシップ層がDEIBに対するコミットメントや理解に欠けている場合、推進を進めるのが困難になることがあります。

これらはDEIBの推進における一般的な障害ですが、個々の組織や状況によって異なる課題が存在する場合もあります。そして、これらの障害と課題を個別に見ていくと、DEIBを推進する上で留意すべきキーとして、私たち一人一人が持つバイアス(偏見)やプレジャディス(特定の集団に対する否定的な偏見)に行き当たります。

バイアス(Bias)とは、特定の偏見や先入観のことを指します。人々が無意識または意識的に持つ、特定の個人やグループに対する好みや傾向、偏見のことを指し、客観性を損なうことがあります。バイアスは、人々の経験や環境から形成されることがあり、思考や行動に影響を与える可能性があります。
一方、プレジャディス(Prejudice)は、特定のグループや個人に対する否定的な先入観や偏見のことを指します。プレジャディスはバイアスの一形態であり、ある特定の属性(例:人種、性別、宗教、性的指向など)に基づいて特定のグループや個人を不当に評価したり、差別的な行動を取ったりすることを指しますが、バイアスとプレジャディスは、人々が持つ先入観や偏見であり、それらが行動や判断に影響を及ぼすことがある点で類似していますが、プレジャディスは特に否定的な偏見や差別的な行動を指す場合があります。

3.DEIB推進へのコーチングの効果と可能性

コーチングが、企業のDEIB/DEIJB(多様、公平、包性、公正、帰属)推進において重要な役割を果たすことがあるので、コーチングにより得られる効果を以下に示します。

1.個人の意識と行動の変容:個々の意識や行動パターンに変容をもたらすことがあります。DEIBに焦点を当てたコーチングセッションでは、自己認識を高め、バイアスやプレジャディスに気づき、自己成長を促すことができます。これにより、個々のメンバーがより包括的な視点を持ち、多様性を尊重し、包括的な行動を取るようになることが期待されます。

2.リーダーシップの育成:DEIBを推進するためには、リーダーが包括的なリーダーシップスタイルを持ち、多様なチームを育てることが重要です。コーチングを通じて、リーダーは自己のバイアスや偏見に気づき、それを克服し、包括的なリーダーシップを発揮するスキルを身につけることができます。

3. コミュニケーションと対話の改善:DEIBの推進にはオープンなコミュニケーションが不可欠です。コーチングは、同僚間やチーム間の対話を促進し、難しい話題や感情的な問題に対処するスキルを向上させることができます。このような対話の改善は、多様性と包括性を促進する上で重要です。

4. 組織文化の変革:コーチングを組織全体に取り入れることで、DEIBを推進する組織文化の変革が進むことがあります。コーチングは個人の行動変容を通じて、組織全体の文化を柔軟で包括的なものに変えることに貢献します。
多様性を尊重するリーダーシップの育成、意識の変容と行動の変化、 コミュニケーションの改善、 人材の定着率向上、などコーチングがDEIBの推進にどのような効果をもたらすかを示すものです。ただし、個々の組織やコーチングプログラムによって結果は異なるため、効果を最大化するためには組織のニーズに合わせたカスタマイズが重要です。そして、成果を最大限に引き出すためには組織が継続的なコミットメントを持ち、継続的なプログラムとしてコーチングを展開することも重要です。

また、コーチングを行う際、留意すべき重要な点がいくつかあります。

1. 個々のニーズを理解する:DEIBに関連する個々のニーズや経験は異なるため、個別のケースに焦点を当てる必要があります。文化やバックグラウンドの違いを考慮し、個々の従業員が抱える課題やニーズを理解することが重要です。

2. 包括的な環境を促進する:コーチングセッションは、包括的な環境を促進する場であるべきです。全てのメンバーが自由に意見を述べたり、自己成長を遂げるためのサポートを受けたりできる場を提供することが重要です。

3. 自己認識とバイアスに対する意識:コーチは自身のバイアスやプレジャディスに気づき、それらを克服するための意識を持つことが重要です。そして、クライアントにも自己認識を促し、バイアスに気づく手助けをします。

4. 包括的なリーダーシップの支援:リーダーとしての役割を持つ人々に対して、多様性を尊重し、包括的なリーダーシップスタイルを発展するサポートを提供することが重要です。リーダーが包括的な環境をつくり出し、従業員が最大限の力を発揮できるよう支援する役割もあります。

5. 客観的な視点を保つ:DEIBに関連するトピックは感情的な側面を持つことがあります。コーチは、クライアントの感情を尊重しつつも、客観的な視点を保ち、偏りのないサポートを提供することが求められます。
これらの点を留意することで、コーチはDEIBの推進に向けた適切なサポートを提供し、メンバーの成長と組織の包括的な文化を促進することができます。

まとめ

 私が職場のDEIJBコミッティのミーティングで、リーダーたちの嘆きとしてよく耳にする言葉があります。
「バイアスをなくして聞かなきゃいけないのに、聞けない。」「チームでも部下との面談でも決めつけて自分ばかりが話して終わっている。」「プロモーションに興味がないメンバーが多くて。」etc.
こんな時、「自分にバイアスがあることに気づいているんですね。バイアスはすべての人が持っています。バイアスがあることを前提に、オープンに共有したらどうなりますか?」と、今は投げかけるにとどまっていますが、これから、チームコーチング、コーチング実践の機会を得ることを楽しみにしています。バイアスを越えた向こうにどんな組織や世界が創造されるかワクワクしつつ、ここまでにまとめたコーチングの可能性や留意点を踏まえ、コーチングをデザインしようと考えています。

記事の著者

藤生 あゆみAyumi Fujiu

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

美大を卒業しアパレル業界に就職後、渡英。そこで対話を通して学ぶアプローチに理想を見出す。日本に導入するため帰国し、日本語教員になる。30歳で教育ディレクターに就任し、対話型教育モデルをつくるため教員養成・教材開発に情熱を注ぐ。10年ディレクターを務める間にコーチングに出会い、自校に導入。2003年よりコーチとしての活動も開始。異文化コミュニケーションへの見識を活かしユニバーサルチームコーチングを実践中。