脳の使い方を変えるWeメソッド®WSC ホールシステムコーチング®Whole System Coaching

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「乗っかり力」が夢の実現につながる

2023.12.01

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私は普段、企業研修の講師など人材育成の仕事に携わっています。
その中で、多くの方が自分の夢や目標の実現、新しいチャレンジに向けて一歩踏み出すことを躊躇している姿を見てきました。
そういう私自身も、以前は新しいチャレンジに対して常に二の足を踏んでしまうタイプでした。

しかし、今ではやりたいことに向けてどんどん行動することができるようになってきています。その1つの要因として「乗っかり力」があると考えています。
ここでは、私自身の個人的経験をもとに、夢の実現に対する「乗っかり力」の重要性と、その力を発揮する上でのコーチングとの関連性について考えてみたいと思います。

1.行動に移せない要因には何がある?

行動に移せない要因は様々ありますが、過去の私自身の経験や周囲の方々の話を踏まえると主な要因としては以下のようなものがあります。

■一歩踏み出すことが怖い
将来は見えないため、踏み出した先にどうなるのかがわからず、怖さから一歩踏み出せない。踏み出した時のリスクばかりに目が行ってしまう。私たちホールシステムコーチング(以下WSC)の言動システムで言うところの「回避型*」思考が強い状態。

*回避型は、目標や望む状態を実現するために、リスクを回避する特性です。リスク管理の行動に長け、その特性は強みです。回避型が悪いわけではありません。

■他人の目が気になる
「これをやったら人は何と言うだろう?」、周囲の人に反対されるのではないかと思い踏み出せない。WSCの言動システムで言うところの「考え方の視点が相手」、「判断基準が外的」が強い状態。

■自分に自信がない
自分のスキルに自信がなく、やりたいけどできないと思い込んでしまう。そのため、できない理由にばかり目が行く状態になっている。

これらの要因を乗り越えるためには、もちろんトレーニングで自分の言動システムを変えることも1つの方法ですが、これには時間がかかります。私自身、実際これらの状況に陥り、過去に様々なチャンスを逃してきていました。
しかし、あるタイミングから「乗っかり力」を発揮することで前に進むことができるようになり、それらの経験を積んでいく中で言動システムも変わってきたように感じます。

【言動システムとは】
価値観、信念(ビリーフ)、自己認識や文化に深く根ざす最も無意識な知覚のフィルターを通してあらわれる言動のことです。

2.「乗っかり力」を上手く活用する(私の事例)

ここでは、私の個人的な事例を紹介します。
私は、以前はかなり保守的な考え方をしており、ぼんやりとやりたいことや好きなことはありつつも、定年まで同じ会社で勤め上げて、安定した生活を送れればいいやと考えていました。そのため、新しい機会やチャレンジに対して動かなくてよい理由ばかりを考え、踏み出すことをしていませんでした。もちろん、海外に出るなんてことも全く頭にありませんでした。

しかし、今では会社を辞めて個人事業主となり、アフリカの教育支援を行うNPO法人を仲間と立ち上げて、様々なチャレンジを行っています。
このように行動が変わった要因は、前述通り自分の言動システムを変える努力をしたというより、目の前に来た機会に「乗っかってきた」ことで、結果として言動システムが変わったからではないかと感じています。

いくつか具体例をあげてみます。

■アフリカに関わるようになったきっかけ
数年前に友人から「タンザニアに行かないか?」と急にお声がけがありました。私はそれまで海外も数えるほどしか行ったことがなく、かつ英語も苦手ということで、アフリカはかなりハードルが高いと感じました。また、回避型のため、病気や治安の不安などリスクの事ばかりが思い浮かんで、3か月ほど悩みました。
最後は「私の人生でアフリカに行ける機会なんてこれを逃したら一生ないだろう。」と思い、行くことに決めました。この誘いに乗ったことで、その後毎年タンザニアに行くことになり、今のNPO法人につながります。

また、このプロセスを通して、今まで周りにどのように思われるかが気になってできなかった行動を取る必要性がでてきました。しかしどの行動を取っても何も問題にならなかった経験から、他人の目が以前ほど気にならなくなりました。

■人間関係の広げ方
やりたいことの実現に近づくためには、人的ネットワークを広げる必要性を感じていた時期がありました。しかし、私は人間関係は狭く・深くで良いという考えで今まで来ていたため、初対面の方が多くいる場は非常に苦手です。そのため、自分から進んでそのような場に出ることや、自分で機会をつくることなどできませんでした。

そこで、何をしたかと言うと、友人から誘いに乗っかることにしました。誘いがあった時に日程が空いていれば必ずYESと言うというシンプルなマイルールをつくりました。すると様々な場に行く機会が増え、結果的にネットワークがかなり広がりました。

これ以外にも目の前に来た機会や人の誘いや提案に乗っかることで、自分のやりたいことに近づいて行くことができています。

3.「乗っかり力」を発揮するためのコーチングの活用方法

私のこのような人生はキャリア論で捉えるとプロティアン・キャリアやプランド・ハプンスタンスセオリーの実践そのものだと言えます。

■プロティアン・キャリアとは
アメリカの心理学者の、ダグラス・T・ホールが提唱した考え方で時代や環境変化に応じて変幻自在に変化していくことを指し、伝統的なキャリアの考え方とは以下のように様々な点で異なっています。どちらが良い・悪いではないですが、変化の激しい現在においてはプロティアン・キャリアの考え方は多くの方に受け入れられています。

<伝統的なキャリア論とプロティアン・キャリア論の違い>

伝統的キャリア プロティアン・キャリア
環境変化 環境変化は前提ではない 環境変化が前提
キャリアの所有者
(主体)
組織 個人
核となる価値観 昇進、権力 自由、成長
成果 地位、給料 心理的成功
態度 組織コミット 仕事の満足感、
専門性へのコミット
アイデンティティ 組織から尊敬されているか
私は何をするべきか
自分を尊敬できるか
自分は何がしたいのか
変化適応力 組織で生き残ること 市場価値

■プランド・ハップンスタンスセオリーとは
スタンフォード大学のジョン・D・クルンボルツ教授らが提唱した理論であり、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とし、その予期せぬ偶然の出来事にベストを尽くして対応する経験の積み重ねで、よりよいキャリアが形成されるという考え方です。そして、この偶発性を活かすためのポイントとして、①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心が挙げられています。

そして、この2つの理論で重要視しているポイントを押さえる上で、私自身はコーチングで学んだ在り方やスキルが非常に役立っています。

例えば、プロティアン・キャリアではキャリア形成をしていく上で、自分は何がしたいのか、を理解していることは非常に重要です。それについては、私自身はコーチングを学ぶ中で10年ビジョンを考えたことがあります。

WSCでは頭だけではなく五感全てを使って10年ビジョンを考えることを通して、理論ではなく、本当にこころからやりたいと思えるビジョンを描くことができます。私もそれまでは全く海外と関わることなど考えていなかったのですが、この10年ビジョンを描いた際に、なぜか海外の人とやり取りをしている絵が思い浮かびました。そして、それは現在のNPO活動で実現されています。

また、ハップンスタンスセオリーのポイントである①好奇心や④楽観性を高める上ではコーチングで学ぶリフレーミングの考え方が良い効果につながっていると感じています。以前は難しい課題が目の前にくると「難しい、無理だ」と捉えがちでした。こうなるとできない理由にばかり目が行くようになり、本当に課題解決に至りませんでした。

しかし、リフレーミングを学んでからは「チャレンジングだ、やりがいがある」と捉えるようにしてみました。すると乗り越えるための方法に目が行くようになり、本当に課題解決につながっていきます。
また、物事が上手く行かなかった際も、失敗だと捉えるのではなく、このやり方は上手く行かないとわかったので別のやり方をすればよいんだ、一歩前進だと捉えることでポジティブなマインドになれます。

このように同じ事象でも捉え方を変えるだけで大きく世界は異なってきます。この捉え方を続けたことによって、好奇心や楽観性は以前より高まっていると感じます。

まとめ

私は自分の経験から、人は何歳からでも変われると感じています。また、現在は環境変化が激しい時代かつ100年人生とも言われているので、今後大きな変化にさらされ、変わっていくことを求められる局面が何度もあると思います。その時に自分が望む人生を選ぶために、「乗っかってみる」ことも一つの選択肢ではないでしょうか。
自分で機会をつくり出すことに躊躇してしまう方はぜひ、乗っかりを試してみてください。

記事の著者

吉岡 恵Megumi Yoshioka

  • WSCコークリエイター
  • ホールシステムコーチング®認定プロフェッショナルコーチ

システムエンジニアを経て、企業向け人材育成・組織開発に従事。
次世代経営者育成を中心に、様々なプロジェクトの企画・設計・運営実績を持つ。
現在は独立し、脳科学や心理学をベースとしたアプローチで組織開発・人材育成を行うとともに、研修講師としても活動している。