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レジリエンスを養う

2019.04.01

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「レジリエンス」という言葉を聞いたことがありますか?
2011年の東日本大震災以降、「レジリエンス」という言葉を日常や職場で耳にする機会が増えたと感じています。
変化の激しい100年時代を生きている私たちは、自然災害に限らず、誰もが不測の事態に直面する可能性があります。
「レジリエンス」とは何なのか、今日なぜ注目されているのか、どのように養われるかについてまとめました。

1.「レジリエンス」とは?

レジリエンス(resilience)とは、跳ね返り、弾力、回復力、復元力、立ち直る力という意味を持つ言葉です。ストレス(stress)と共に、物理学の分野で使われていた言葉でしたが、近年では個人・組織ともに通用する「さまざまな環境・状況に対しても適応し、生き延びる力」として使われるようになりました。

レジリエンスという概念は、ナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺「ホロコースト」で生まれた孤児への追跡調査がきっかけといわれています。元孤児の中には、過去のトラウマや恐怖の記憶から立ち直れず、生きる気力を見出せずに不幸な人生を送っている人々がいる一方、トラウマを乗り越えて仕事に就き、幸せに生きている人たちもいることが判明しました。

そこで調査を進めていくうちに、逆境を乗り越えた人たちは、困難な状況に圧し潰されることなく、「状況に準じて生き抜く回復力」を持っていることがわかりました。

2.「レジリエンス」が求められる背景

2011年に発生した東日本大震災で地震や福島第一原子力発電所事故による災害に見舞われた直後、暴動やヒステリックなどを起こさず、しっかりと前を向き、復興に全力を注ぐ日本人の姿勢はレジリエンスの高い国として世界中から多く賞賛を浴びました。

予期せぬ自然災害やそれらの危機に立ち向かうには、国家としてのレジリエンスが必要不可欠ですが、また、日本経済の不確実性が増すと同時に、優れた回復力・適応力を意味する「レジリエンス」を持った人材の需要が高まっています。
なぜなら、レジリエンスは仕事の量や質、職場での人間関係によるストレスへの抵抗力としても注目されているからです。

3.「レジリエンス」の高い人の特徴

ここでは、レジリエンスが強い人材とはどのような特徴があるかを紹介します。
レジリエンスを持つ人材の特徴は「精神」、「習慣」、「行動」の3つの側面に表れているそうです。

■精神面におけるレジリエンスの特徴
感情のコントロールや自分自身に対する思い、考え方に大きな特徴があると考えられます。

・一喜一憂しない
一喜一憂する人は、期待と不安が交互に訪れ、精神的疲労が溜まりやすい傾向がみられます。「きっとこれは成功だ」と喜んでいたら、ヌカ喜びに終わってしまう」、「結果が出る前から諦めてしまい、途中で投げ出してしまう」傾向がある人はレジリエンスを身に付ける必要があります。また、喜怒哀楽が激しい人も、ひとつひとつの事象に対する心の反応が大きすぎて、精神を消耗してしまいがちです。レジリエンスを発揮できる人は、「何が自分にとって大切か」ということを理解しており、結果が出るまでは自分の感情を適切にコントロールします。喜んだり悲しんだりする気持ちを抑え、状況に応じて、適切な行動に移せる人物の特徴ともいえます。

・自尊心や自信を持っている
自尊心が高い人もレジリエンスの力が強いといわれています。自尊心は今すぐに手に入れられるものではなく、小さな成功体験を積み重ねていくことで徐々に形成されていくものです。どんなにつまらない仕事や業務でも、自分なりに意味や意義を見出し、しっかりと取り組むことが、「自分ならきっとできる」「信じてやればきっと大丈夫」という自信につながり、自尊心が形成されていきます。成功体験が生み出した「自分ならできる」という自信や自尊心が、困難や問題に出会った時に強力なレジリエンスを発揮させてくれます。

・自己効力感を持っている
何かをやり遂げようとして、失敗を重ねた時、人は「大きな失望」を感じます。しかし、「これだけやってもだめなら、もう無理だ」と諦めた時点で、成功への道は完全に閉ざされてしまいます。何度失敗しても、その失敗に価値を見出せる人は「さっきよりうまくできたから、次は大丈夫かもしれない」と成長を感じ、めげずに挑戦し続けることができます。この意識こそ「自己効力感」と呼ばれるものであり、ビジネスの世界だけでなく、さまざまなシーンで人が成長するための重要な要因と考えられています。高いレジリエンスを持つ人はこの自己効力感が高いことが判明しています。

・楽観性を持っている
レジリエンスのある人は、楽観的な視点を持って、あらゆる物事に取り組む傾向がみられます。困難に直面した時に、悲観的になってしまうと進むべき道や改善点などが見つけにくくなります。「何とかなる!」という楽観的な考え方は行動力を生み出す源泉にもなり、結果が伴う行動につながります。現在の状況を悲観せずに楽観的に捉える思考は、レジリエンスを発揮するための重要な要素でもあります。

■習慣におけるレジリエンスの特徴
強いレジリエンスを発揮できる人材は、日々の習慣にも特徴がみられます。
ここではレジリエンスを持つ人材が行なっている習慣の一部をご紹介いたします。

・ネガティブな連鎖を断ち切る習慣
「精神面におけるレジリエンスの特徴」でもご紹介しているとおり、レジリエンスを発揮できる人材は楽観性を持っています。そのため、日々の活動の中でネガティブな要素を排除する習慣に長けていると考えられます。否定的な言葉を使用しない、「できない理由」よりも「できる理由」を探す、他人の良いところを見出す、楽観的な考え方の人と行動を共にするなどの習慣は、ネガティブな連鎖を断ち切る有効な手段です。特にネガティブな言葉は周囲に悪影響を与えるだけでなく、自己暗示をかけてしまう効果があります。これらの習慣は日々のちょっとした意識で実践・改善できるため、ビジネスを行なう上でも有効な習慣といえます。

・定期的に振り返る習慣
ビジネス活動において、業務内容や従業員の行動、成果や結果を踏まえて、次に活かすPDCA(Plan-Do-Check-Act)はビジネスパーソンの基本とされています。レジリエンスを発揮する人はこのCの部分である「振り返り」を重視する傾向がみられます。PDCAのCには、成功や失敗に限らず、自己成長のポイントが隠されていることも多く、自分自身の弱点と向き合うきっかけにもなります。変化に適応するためには、日々の振り返りが不可欠です。レジリエンスを身につけるトレーニングとしても定期的に振り返る習慣をつけることは有効と考えられます。

・ストレス体験に直面したときの習慣
人は強いストレスを感じることで、心身ともに消耗してしまい、さまざまな症状を引き起こします。そのため、ビジネスパーソンには「回復力」としても注目されるレジリエンスが求められるようになりました。強いレジリエンスを持つ人材は、ストレス体験に直面した時、適切な対応を取る独特の習慣を身につけています。自分にとっての大切な価値観を振り返る、強いストレスほどチャンスと考える、大きな視点で物事を考える、何事も割り切って考えるなどが挙げられます。これらのストレス体験に直面したときの思考や行動を習慣に取り入れることで、レジリエンスの強い人材に近づくことができます。

■行動におけるレジリエンスの特徴
良い結果も悪い結果も行動しなければ、得ることができません。
レジリエンスを発揮できる人には、行動においても特徴がみられます。

・人に対する強い信頼
「困難な状況に陥っている人は周囲の人間の応援や励ましによって、「再起力」を発揮します。そのため、家族や友人、同じ価値観や志を持つ仕事仲間に対して、強い信頼を持つ特徴がみられます。自分ひとりだけの力で、困難に立ち向かうことは容易ではありません。しかし、周囲からの協力や応援を得ることで、困難に打ち勝つことができた事例は山ほど報告されています。レジリエンスを発揮する人は自分を取り巻く周囲の人のありがたみを強く感じるため、信頼関係を構築するための気遣いや行動を重視します。

・物事を大局的に観る
困難やトラブルに直面したとき、人は視野が狭くなってしまう傾向がみられます。悩み事だけに集中してしまうことは、ネガティブな連鎖に陥り、状況がさらに悪化してしまう危険性があります。しかし、直面した困難やトラブルを大局的に観ることで、思わぬ解決策を見出すことが少なくありません。普段から物事を大局的に観ることはリスクの軽減や防止にも有効です。レジリエンスは回復力、適応力だけでなく、危機管理能力やリスク対応能力としても注目されているため、大局観はレジリエンスを発揮する重要な行動のひとつとして考えることができます。

・事実の受容と柔軟な目標変更
レジリエンスを発揮できる人材は、良い結果・悪い結果に関わらず、事実をありのままに受け入れることができます。また、その結果を受けて、柔軟に目標を変更することができるため、変化に対する適応力が高いとされています。目標の変更は「諦め」の象徴にも見えますが、達成不可能な目標を永遠に追い続けることは愚の骨頂といえます。目標自体を見直すことは決して悪い行動ではなく、刻一刻と変化する世の中に対応するための重要な行動と考えられます。

まとめ

ここまで「レジリエンス」について紹介しましたが、変化の激しい現代社会において、精神的回復力や環境適応能力はあらゆる人に求められる能力だと思います。レジリエンスは個人・組織に関わらず、成長や危機回避においても高い効果を発揮します。
また、幸福学の観点からも「人生をより豊かなに過ごすための重要な要素」として認識されており、人のアイデンティティや自尊心、価値観の形成にも重要な役割を担っています。

望む人生を手に入れるため、目標に向かいチャレンジしていく上で、この「レジリエンス」を養う習慣形成を体系化したサポートこそがコーチングです。コーチングでは、レジリエンスに必要な自己肯定感、自尊心を高め、また「自己の思考の癖」を知ることで、目標を達成するための耐力とプロセスを備えていきます。

記事の著者

藤生 あゆみAyumi Fujiu

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ