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後継者をどう育てるのか

2018.12.09

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「交代を成功させることは、優れたリーダーが最後に手がける大仕事」
(フランシス・へッセルバイン)

経営者に万が一のことがあった時、社員の雇用を守り、取引先とスムーズな取引を続け、
顧客へのサービスを継続するために、経営者は早いうちから後継者を育てておく必要があります。
但し、経営者の高齢化が進む中で、後継者が不在の企業は非常に多く、企業全体をみると、
全体のほぼ3分の2にあたる66.5%の企業において、後継者不在となっています。

帝国データ 後継者問題に関する企業の実態調査より引用)

一般的に事業承継に必要な期間は10年 、短くても3年といわれています。
今回は、トラブルなく後継者を育てていく手法をまとめてみました。

1.誰を後継者にするか決める

まずは、事業を誰に継承するかを明確にします。
事業継承には大まかに3つあります。
 
「親族内承継」息子や娘、その他親族に会社を引き継ぐ事で、最も馴染み深い方法です。
「従業員への事業承継」すでに事業に携わっている従業員に承継するという方法です。
「第三者への事業承継」「M&A」の事で、第三者への事業承継です。

事業を誰に継承するかを明確にすることにより、経営者のやる事、後継者のやる事が
明確になります。事業承継は 、引退時期を決めずに長い期間をかけても結局進みません 。
そして、期日を決めて正しい手順で準備をすれば 、大幅に期間を短縮することが可能です 。

その時に気をつけないといけないのが、後継者本人の経営者としての資質や人望について、
しっかりと見極めが必要です。組織は人が集まって働くところで、人材を適所に配置することや、そこで働く人々のチームワークが仕事の成果や業績に影響を与えます。後継者候補が
経営者からは良く見えても、その他の従業員にとってはそうは思われていないケースも少なくなく、承継の結果、重要なキーマンの離反を招く可能性も考えられます。

そして、後継者が事業に関する現状をきちんと認識していることや、リスクを引き継ぐ覚悟等を確認したうえで、後継者を誰にするか決める必要があります。

私のクライアントで、将来息子に自社の不動産会社を継がしたいと考えている経営者がいます。
息子さんはまだ高校生ですが、いつか事業をついでもらったらいいなと漠然とお話をされていました。あるセッションの時に、具体的にどの様な会社の状態で事業を継承したいのかを
明確にしました。

すると、継承したい売上や従業員数、そして継承してもらいたい経営者の思い、
そしていつ継承できたら幸せかなどが明確になり、経営者としてやる事が明確になりました。
将来、息子と事業継承の話をする事を楽しみにされています。

2.後継者育成の手順

【1.後継者を誰にするか決める】にて、後継者が決まれば育成手順は以下の通りです。

(1)自身が経営者ならどうするか?置換トレーニングを始める。
後継者への事業引継ぎ日を決定したら、後継者にある程度の役職をつけ、現場を知り、理想の経営現状と理想のギャップを明確にし、「あなたが経営者なら、どの様に対応するか?」
という問いを立てます。そうすることで、継続者は、自信が経営者ならどうするか?
という視点に立ち、問題を解決していきます。この置換トレーニングが、自身が経営者
になった時に非常に役に立ちます

その置換トレーニングのアプローチに、コーチングは非常に機能します。

私の取引先の社長たちは、「社長になる前から自分が社長ならどうするか?」
を考え、実践してきたと口をそろえて言われます。

(2)経営理念を考える。
現経営者が残したい理念と、継続者が考える経営理念の双方で話し合い合意を得る。
そうする事で、継続者が事業を引き継いだ時に、組織の迷いや重要なキーマンの反発
などを防ぐことができます。
経営理念には3つの内容が含まれます。
1、ミッション(使命)- 業務を通して社会に貢献する
2、ビジョン - こうありたいと言う願望・夢
3、価値観 - 会社絵経営で大切な事、大事にしている事

また、良い経営理念にはつぎの4つの効能があります
1、求心力がある
2、社員に誇りと自信をもたせる力がある
3、株主や取引先から信頼を獲得する力がある
4、優れた人材を集める事ができる
(たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法より引用)

経営理念の作成では、特にコーチングが機能します。

(3)業務ノウハウの移行、営業スタイルや経理の方針など 、業務の運営ノウハウを理解する。
ここからは、具体的に業務の様々な部分を後継者へ引き継いでいきます。これらを理解
する事で、従業員とのトラブル ・意見の食い違いも少なくなります。

継続者と従業員たちの言葉や認識を共有していくとき、コーチングは有効です。

(4)組織改革
承継後も円滑に経営できる組織を編成するため、現経営者と従業員、幹部達とのあらゆる情報が後継者に届くような体制について考えます。これまでにトップダウン経営が適してないと
判断したら、新たにボトムアップによるプロセスを検討するのも、後継者の役目です。
(下図参照)

チームコーチングは組織改革に適しています。
一チームを一人格として、コーチングを行う事で、チームの文化にも変化が起き、組織改革が始まって行きます。
この様に、コーチングを後継者育成のアプローチとして使うことが可能です。

3.後継者の可能性を信じる

最後に、後継者育成で一番大切なのは、後継者の可能性を信じる事です。
後継者の持っている無限の可能性と、後継者が抱える問題の解決やゴール達成へ向けての
必要な事柄は、すべて後継者の中にあることを信じます。
後継者は信じられることにより、可能性を最大限に発揮します。

まとめ

先日、新潟県のある会社の社長就任パーティーに参加しました。その会社は、業界の
リーディングカンパニーです。二代目は38歳とまだ若い社長でした。
「私は、おやじに早く会社を引退してほしいと思っていました。おやじが今まで育ててきた
この私と、この会社のスタッフを信じて、安心して引退してください。
そして、これからは、私がおやじ以上の会社をつくっていきます。」とスピーチされました。 

二代目の自信にあふれたスピーチを聴いて、先代社長の後継者育成は上手くいったんだな
と感じました。

現経営者は自らの会社の事業内容について知ってる事も多いでしょう。
ましてや、その方が創業者であれば 、本当に苦労して会社を軌道に乗せて成長させてきた、たたき上げの経営者である場合がほとんどです。

その場合、自分と比べ、後継者のことがつい頼りなく思ってしまいます。
その結果、どうしても事業承継の進め方が、上から下への一方通行になり、
承継を成功に結びつけるために必要な「後継者の可能性を信じる」という気持ちが
薄くなり、双方向のコミュニケーションがうまくいかず失敗してしまうのです。

ご自身が今まで頑張って大きくして会社を、いいカタチで引き継ぐために、今から準備をしておきましょう。

記事の著者

山本 貴史Takashi Yamamoto

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ