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人を聴く
2024.05.01

コーチングをするとき、クライアントが話す課題(問題)ばかりを扱っていませんか?もちろん私たちコーチは、クライアントの望む成果に向かって、クライアントとセッションで合意した目標を扱いますが、その課題(問題)に向き合っているクライアント、その人そのもの(The Who)にも焦点を当てる必要があります。すなわち、クライアントの「事柄」だけを聴くのではなく、「人」も聴くのです。
私自身のコーチングは問題解決型でした。クライアントとして私自身(人)に触れたとき、この違いを実感しました。
どうして人を聴くことが大切なのでしょうか?「人を聴く」とは何をすることなのかを探求していきましょう。
1.「人を聴く」とは?
人を聴くとは、人の何(どこ)を聴くのでしょうか?国際コーチング連盟(ICF)の「コア・コンピテンシー」でも、「クライアントの考え方、価値観、ニーズ、欲求、信念について質問している」など、多くの項目で触れており、事柄(課題)だけを扱うのではなく、クライアント自身、「人」をコーチすることが大切であるとしています。
2.どうして「人を聴く」のか?
どうして、人を聴く必要があるのでしょうか?コーチングで得たいことは、クライアントが自分の内面から学び取り、変化する経験です。問題解決やパフォーマンスの向上ではありません。「やるやる」と言って行動を起こせない(起こさない)クライアントとともに、次こそは取り掛かれるアクションを考えることに焦点を当てるのではなく、行動を起こさないでいるクライアント自身に何が起こっているのか、内省的探究をするのです。これにより、人間の魂に働きかけて活力を取り戻すのです。
3.どんなところに着目するのか?
人を聴くとき、どんなところに着目すれば良いのでしょうか?ホールシステムコーチング(WSC)では、「言動システム」に着目します。これは、価値観、信念(ビリーフ)、自己認識や文化に深く根差す、最も無意識な知覚のフィルターを通してあらわれる言動です。いくつかのポイントを挙げてみましょう。
①人が一番大事だと考えているものが、その人の価値観です。私たちは自分の価値観に従い、仕事や友人、人間関係、将来の夢を選びます。価値観に沿っていると、私たちは幸せでいられます。クライアントが大切にしている価値観は何か、実現したい目標は価値観に沿っているのかに着目してみましょう。
②クライアントの矛盾や感情の変化、繰り返される言葉、どんな考えが重大な障害になっているのか、本当の望みやクライアント自身を縛っている心情、恐怖を聞き逃していないでしょうか?
③思考パターンや偏見、思い込み、感情のフィルターなどに気づけているでしょうか?人が長い間、同じ思い入れに基づいて同じ行動をとってきた場合、問題解決的なアプローチは役に立ちません。
④「~したい」、「~しなければいけない」とクライアントが話した点は心に留め、本人が望んでいる、または必要と感じているもの、それが実現されないことでもたらされる影響の大きさなども共に探求してみましょう。
⑤クライアントの表情やしぐさ、感情の変化に気づき、それをフィードバックすることで、クライアントは立ち止まり、感情の湧き出る場所を掘りさげ、自分を縛っている思い込みや葛藤、恐怖を探り始めることができるようになります。その感情がどこから来るのか、目指す目標とどのような関係があるのかを共に探求してみましょう。
⑥否定的な言動の中にも、肯定的な意図が存在します。クライアントが否定的な言動を取ることで得ているのは何なのか?そこに焦点を当てることで、本当に大切にしていることが見えてくるでしょう。
4.「人を聴く」ために必要なことは?
問題解決型ではなく、人をコーチするためには、何よりも関係性構築が大切です。より良い関係性が構築できていれば、クライアントは安心して自由に自分を表現することができます。コーチとして大切なのは、クライアントが話し、表現するものを勝手な評価を加えずにしっかりと受け取ること、そしてそれを扱っていくかどうか「合意を得る」ことです。注目され、尊重されているとクライアントが感じられるような思いやりがあり、安心できる関係性をコーチが築くこと、そのうえで二人が到達したい目標について合意できれば、コーチングは自然と進むでしょう。
コーチは、クライアントとの間に信頼の絆が深まるよう努力する必要があります。そのような関係性がなければ、ともに考えるパートナーにはなれません。勇気や思いやり、好奇心を持ち、クライアントの可能性を信じる、コーチングマインドを発揮し続けることです。
まとめ
自分のコーチングを振り返ると、ずいぶん長い間、問題解決型コーチングをおこなっていたと感じます。自身がクライアントとして体験したコーチングも、課題にだけ焦点が当たっていたときは、はじめの一歩もやるやる詐欺状態で、微動だにしませんでした。やらなくてもコーチから責められることはありません。コーチから、「このパターンは、あなたの人生にどのようにつなががっていますか?」と質問を受けたとき、「ダメ人間になりたくない」と強く感じた経験があります。自分一人では気づかないものです。コーチとしてその人を聴き・コーチすることで新たな世界を共創していきましょう。
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