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会議の厄介者は場の声を届けている
2026.06.01

「またあの人か……」「また流れが止まる」
会議の場で、そんな空気をまとってしまう人がいます。
話の腰を折る発言、空気を読まない問い、あるいは誰もが「もう決まったこと」と思っていた議題を、ひとりだけ蒸し返す。
以前、ファシリテーターの仲間うちでは、こうした参加者を「困ったチャン」と呼んでいました。
「今日の場、どうする?」と、研修の前後にこっそり話し合ったりしながら。
どう対処するか、どう抑えるか。それが長らく、現場の関心事でした。
もちろん正式な用語ではありません。
しかし、『扱いに難しさを感じる参加者』として、多くの現場に共通して見られる存在です。
ファシリテーターや進行役の立場からすると、その場をどう収めるか、どう影響を最小化するかに頭を悩ませることもあるでしょう。
「場を乱す人」として静かにスルーする、あるいは柔らかくブロックする。
そうした対応が、いつのまにか『正解』のように扱われていることもあります。
しかしその人の声は、本当に、『処理すべきノイズ』なのでしょうか。
1.違和感は『場の声』かもしれない
チームコーチングの視点では、個人の発言を、その人だけの問題とは見ません。
その言葉を『場に起きていることの現れ』として捉えます。
誰かひとりの違和感は、場全体がうすく感じていたものの『代表値』であることがあるからです。
たとえば、議論が順調に進んでいるときに、ひとりがこう言ったとします。
「それ、現場は納得しないと思います」
一瞬、空気が止まる。
ここで、流すのではなく立ち止まる。
チームコーチングでは、この引っかかりを入口に、場そのものを見にいきます。
その一言をきっかけに、見えてくるものがあります。
現場との認識のズレ、見ないことにしていたリスク。
『厄介者』は問題を起こしたのではなく、問題を早く見せてくれた存在かもしれません。
異質なものはノイズに見えます。
そして、進化はいつも異質から生まれます。
2.チームは『一つのシステム』として動いている
ここで、少し視点を広げてみます。
チームコーチングでは、チームを個人の集まりではなく、関係性や文化を含んだ一つのシステムとして捉えます。
さらに、チーム全体が「一つの脳のように機能する存在」とも考えます。
そう見ると、ひとりの発言は個人の意見であると同時に、システム全体の動きです。
『困ったチャン』は、場のどこかで起きている違和感を言葉にしてくれている存在とも言えます。
その発言は、チームという有機体が発した一つのシグナルです。
たとえば、こんな発言です。
「現状で何が悪いんだ」
(変化への抵抗に見えるが、実は「今までの功績への敬意」がある)
「そんなの難しい、無理無理」
(後ろ向きに見えるが、「慎重さ」や「リソース不足」を代弁している)
「みんなが文句言ってる」
(全体の総意を装っているが、実は場に漂う「不安」を拾い上げ、チームの「隠れた痛み」を可視化している)
「現場の何を知っているんだ」
(排他的に見えるが、「境界線」や「チームのアイデンティティ」を守ろうとしている)
チームコーチングでは、これらを個人の問題ではなく「チームという全体機能の一部」と捉えます。
誰かを無理に黙らせても、根本の原因が消えるわけではありません。
形を変えて、また別の誰かが同じ声を上げることになるでしょう。
3.そのとき、チームコーチは何を言うのか
では、その瞬間、チームコーチはどう関わるのでしょうか?
まず、発言してくれたことを承認します。
「今、言葉にしてくれてありがとうございます」
次に、焦点を個人から場へと移します。
「今の話、私たちはどう感じていますか?」
「今、私たちの間で何が起こっていますか?」
「この違和感は、私たちに何を教えていると思いますか?」
問いのポイントは一つ。
個人ではなく、『私たち(We)』に向けること。
すると発言は、個人の意見から関係性の現象へと変わっていきます。
まとめ
私たちはつい、『どうすればスムーズに進むか』と考えがちです。
ときにはこう問い直してみてはいかがでしょうか。
「この違和感は、私たちに何を教えているだろうか?」
チームコーチングとは、会議の答えを整える技術ではありません。
まだ言葉になっていないものに、耳を澄ませる営みです。
そして、その最初の声は、ときに『困ったチャン』の姿をして現れます。
それをノイズとして処理するのか、それとも『場の声』として受け取るのか。
その違いが、チームの深さを決めます。
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