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(ペーシング(ペース合わせ)と迎合は違う)

なんでも受け入れなければならないのか?
(ペーシング(ペース合わせ)と迎合は違う)

2018.12.02

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こんな質問を受けたことがあります。
「コーチは答えを教えないんでしょう?ただ話を聞いて承認するだけですか?
 それは相手に気に入ってもらうための行為のように思えるのですが。」 
い~ぃ質問ですね。
「ペーシング(ペース合わせ)」と「迎合」とを比較し、その答えを探したいと思います。

1.ペーシング(ペース合わせ)とは

信頼関係を築く1つの手段として、相手にペースを合わせるというものです。
例えば次のような要素に合わせることができます。

・聴覚   : 声の調子、声の高低、声の大小、話のリズム、スピード
・視覚   : 表情、姿勢、手足の位置や動き
・身体感覚 : 呼吸、うなづき、相づち
・言語   : 言葉の中身(事実)、感情などをオウム返しする    など

クレーム対応にはペーシング(ペース合わせ)が重要だと聞きます。
何らか不快な思いをし、感情的になっていらっしゃるときには、口調が早口で
矢継ぎ早に主張が出てきます。そのとき対応側がスローな口調で冷静な返答を
していると、返って不満を感じるようです。スピードのあるうなずきや小刻みな
相づちをし、呼吸を感じながら、徐々にペースをリードしていくのが良いと
言われています。

「あなたをしっかり観ていますよ」「あなた(の話)をしっかり聴いていますよ」
「あなた(の存在)をしっかり感じていますよ」ということが話し手に伝わるのでしょう。
伝わったことがどのようにしてわかるのかと言いますと、
「あなたとはうち溶けられそう」「あなたにはわかってもらえた気がする」という言葉や、
皮膚の色が変わるのをコーチは観察します。“息が合う”という表現がそれに当たりますね。

2.迎合するとは

辞書で調べてみると、このように表現してあります。
・自分の意見を曲げてでも、相手の気に入るように調子を合わせること。
・相手の気に入るように努めること。
・相手に合わせて自分の意見や態度を変えること。
「へつらう」と表現している辞書もありました。

会社内で上司に迎合するという場面を見たことがある、あるいは自分もそうしたことがある、
という人がいらっしゃるかもしれません。
中には部下に迎合したことがある、という経験を聞いたこともあります。
会社組織であれ家庭内であれ、権力を持った人がそこに成長を求めず、ただただ自分の思い
通りにしてくれればよいと考えるならば、迎合は便利なツールになるでしょう。

コーチングに迎合が加わってしまうとこうなります。(ク:クライアント、コ:コーチ)

ク『主人には困っています。週末はゴルフだバーベキューだと言って、家にはいません。
  家の問題はすべて私が考えるしかないのです。ほんとにもう!!』
コ『あら~、それは疲れるでしょうね。家の問題は色々ありますからね。』
ク『そうなんですよ。先日なんて子供の受験について相談しようと思ったのですが、
  本人の希望通りでいいじゃん、のひと言で寝てしまったんです。きっと興味がないんです。』
コ『いますよね、そういうご主人。あなたも大変ですね。』

いやぁ、自分で書いていてがっかりします。もはやコーチングとは呼べませんね。

3.コーチングの会話に必要なこと

「コーチは答えを教えないんでしょう?ただ話を聞いて承認するだけですか?
それは相手に気に入ってもらうための行為のように思えるのですが。」という
冒頭の質問について、答えを考えてみましょう。

2でも書いたように、迎合はコーチングの役に立ちません。
時としてコーチは直感に従い、“ズバリ伝える”ということも大切な仕事です。
話を聴いて承認するというとき役に立つのは、迎合ではなくペーシング(ペース
合わせ)です。

2の会話をペーシング(ペース合わせ)に変えてみましょう。

ク『主人には困っています。週末はゴルフだバーベキューだと言って、家にはいません。
  家の問題はすべて私が考えるしかないのです。ほんとにもう!!』
コ『うんうんうん、とても腹を立てているのですね。温風のように伝わってきます。』
ク『そうです。そろそろ爆発を起こしそうです。』
コ『爆発したいんですか?』
ク『できれば、爆発はしたくないですよ。』
コ『その爆発を鎮めるのに、何があればよさそうですか?』
ク『そうですね。とにかくクールダウンしないと。電源を一度オフにするような…』
コ『興味深い。電源スイッチはどこにありますか?』

最初の一文は早い口調で声も大きく、肉体に力が入っているのが想像できると思います。
まずはそれに合わせ、「電源」や「クールダウン」という言葉が出てきたあたりから、
リードしていくことがよさそうです。

まとめ

ペーシング(ペース合わせ)を用いることで、クライアントとの信頼関係を築きます。
言い換えれば、ペーシング(ペース合わせ)が得意なコーチは「できるコーチ」と
言えるかもしれませんね。

記事の著者

船木 優子Yuko Funaki

  • WSCコークリエイター
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
  • ホールシステムコーチング®︎認定プロフェッショナルコーチ

メーカー企業にて営業アシスタントを経て、新人スタッフ育成を学び担当する。テーマパークの開業準備を経験した後、人材育成の部門にてマネジメント、キャリアディベロップメント、アルバイトスタッフ育成など幅広く携わる。2004年にコーチングと出会い、社内に導入する。その後、外食産業系企業で店長や女将業の現場経験を積み、2013年に独立。現在は、プロコーチとして企業の人材育成、組織開発を行っている。